為替相場下落の影響で鶏肉価格が急騰 (マレーシア)




● 政府が鶏肉の出荷価格に上限を設定

 マレーシアでは、 物価上昇を抑制するため、 主要食料品の多くについて政府が
販売価格を管理している。 鶏肉は、 畜産物の中で最も消費量が多いことから (9
5年の1人当たりの消費量は33キロ (骨付きベース))、 その価格は価格管理品
目のひとつとなっている。 

 鶏肉の価格管理の具体的な方法としては、 政府と生産者等で構成する委員会が、 
その時点の需給状況等を勘案して、 週ごとに生産者の出荷価格の上限となる指標
価格を決定している。 なお、 実際の鶏肉取引においては、 供給過剰気味であるこ
とから、 指標価格より若干低い水準で行われているのが実状であった。 

 ちなみに、 今年7月上旬の指標価格は、 生体1キロ当たり2.30リンギ (約
93円) で、 今年に入ってから最も低い水準であった。 これは、 4月以降、 供給
過剰で鶏肉価格が低落し、 取引実勢価格が2.10リンギ前後となったため、 指
標価格もこれに合わせて引き下げられたためである。 


● 生産調整と為替相場下落で鶏肉価格が急騰

 しかし、 その後、 鶏肉需給をめぐる状況は一変し、 鶏肉価格は回復に向かった。 
この原因としては、 生産者が協調して実施した生産調整の効果が大きい。 しかし、 
タイバーツの為替相場急落をきっかけに、 マレーシアを含め他の東南アジア諸国
通貨の為替相場が大幅に下落したことが、 より直接的な影響を及ぼした。 為替相
場の下落により輸入品の価格が急騰し、 原料の多くを輸入に頼る飼料会社は一斉
に値上げに動いたためである。 その結果、 飼料費が生産コストの6割以上を占め
る鶏肉も大きな影響を受け、 8月時点の鶏肉の1キロ当たりの生産コストは、 2.
70リンギに達した。 

 このため、 政府は、 鶏肉の指標価格を引き上げざるを得なくなり、 8月21日
には2.70リンギ、 8月30日には2.90リンギへと連続して値上げを実施
した。 これにより、 同国の鶏肉価格は、 わずか1ヶ月の間に26.1%も大幅に
上昇したことになる。 

 政府は、 今回、 鶏肉指標価格の引上げを決定するに当たり、 消費者への影響を
考慮して、 当該指標価格を来年2月まで据え置くことを確認している。 

 しかし、 複数の要因が重なったとは言え、 最も重要な畜産物である鶏肉の今回
の価格上昇は、 あまりにも急激で、 かつ、 大幅なものであったため、 国内に及ぼ
す影響は非常に大きく、 消費者の不満が高まることが懸念されている。 



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