ノースカロライナ州で、 養豚産業を規制する環境法が成立 (米国)




● 河川へのふん尿流出事故が新法の契機に

 今年8月下旬、 ノースカロライナ州において、 養豚産業にとっては非常に厳し
い環境規制となる 「汚水浄化責任法」 が成立した。 

 「ノースカロライナの奇跡」 と言われる同州の養豚産業は、垂直統合を基本とし
て目覚ましい発展を遂げ、 現在の肉豚飼養頭数は、 伝統的な肉豚飼養州であるア
イオワ州に次ぐ全米第2位を占めるまでに成長した。 しかし、 95年6月のハリ
ケーンの被害によって生じた、 ラグーン (人工の汚水調節池) 決壊による河川へ
の豚ふん尿の流出事故は、 その規模が合計で8エーカー (約3.2ha) におよ
び、 また流出量は約2千5百万ガロン (約9万kl) に上った。 また、 この事故
が原因で、 近隣河川に19マイル (約30km) にわたり魚類の被害が確認され
た。 こうした事故を契機に、 環境団体を中心として住民の間に環境問題に対する
関心が一気に高まり、 養豚産業への風当たりが、 ますます強まったとされている。 


● 新規参入や大規模化を制限

 今回成立した法律では、 97年3月1日に溯って、 99年3月1日までの2年
間、 原則として豚飼養頭数が250頭以上の規模の豚舎やラグーン等の建設許可
を一時停止するとしており、 新規参入はもとより、 実質的に規模拡大が制限させ
ることになった。 

 また、 豚舎等は、 原則として最低でも住宅から1,500フィート (約450
メートル)、 学校や病院等からは2,500フィート(約750メートル) 以上離
れた場所に建築しなければならないこととなった。 

 州以下の行政単位である郡は、 この法律に基づき、 大規模経営体 (飼養する豚
の生体重が合計で60万ポンド (約272トン) を超えるもの) については、 地
域内における豚舎等の建築を制限するゾーニングの規則を、 それぞれ定めること
ができることとなった。 


● 官、 学協同で臭気に関する調査を開始

 また、 州政府は、 ノースカロライナ大学などに対し、 悪臭防止技術、 ラグーン
の改良や新たなふん尿処理方法についての研究報告を提出することを依頼すると
共に、 その報告を踏まえて、 経済的に実現可能であれば、 悪臭の規制に関する暫
定規則を99年3月までに制定するとしている。 


● 他産業からの廃棄物等についても基準を見直し

 ノースカロライナ州では、 郊外への人口流出というスプロール現象の進展の結
果、 市町村における汚水処理能力が限界に達し、 その対応策が緊急の課題になっ
ていると指摘されている。 そのため、 同法では、 畜産だけでなく都市廃水やゴル
フ場の施肥を対象にした主要河川流域ごとの流域水質管理計画の確立、 地表水に
おける窒素とリンの排出上限値の設定等を定めている。 豚肉業界関係者の間では、 
今回の法律制定により、 他州も追随して環境規制の強化に乗り出すのではと懸念
する見方が出ている。 



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