USTR、 酪農団体等の要求に応えてカナダの酪農政策をWTO提訴 (米国)




● 通商法301条に基づきUSTRに提訴を要求

 米国の生乳生産者や乳業者の団体である全国生乳生産者連盟 (NMPF)、米国
乳製品輸出協議会 (USDEC) および国際乳製品協会 (IDFA) の3団体は、 
9月5日、 74年米通商法301条の公式手続きに基づき、 カナダの乳製品に対
する輸出補助金政策等は世界貿易機関 (WTO) 協定に沿った運用が行われてい
ないとして、 米通商代表部 (USTR) に対し、 WTOに提訴するよう要求書を
提出した。 なお、 NMPFを中心とする米国の酪農団体は、 カナダの酪農政策が
WTO協定に合致していないとして、 以前から非難してきたところである。 


● カナダはUR合意に基づき新酪農政策を発足

 カナダは、 生乳供給管理政策により、 基本的に国内需要に合わせた生乳の計画
生産を行っている。 このため、 乳製品の輸出は極めて限定的である。 この輸出品
に対しては、 従来、 生産者からの課徴金を乳業メーカーに給付することにより、 
国際価格水準の輸出が可能となるよう措置してきた。 しかし、 ウルグアイ・ラウ
ンド (UR) 農業合意により、 当該措置は輸出補助金とみなされることとなった。 
このため、 カナダは、 課徴金制度を廃止し、 95年8月には、 輸出乳製品向けの
生乳価格を乳製品の国際価格水準に見合うように引き下げる一方で、 国内向け乳
価との差額を、 カナダ全体の酪農家で負担するシステムを設定した。 


● 米国側は輸出補助の迂回措置と主張

 米国の酪農・乳業団体が、 WTO合意違反であると問題にしているのは、 次の
2点である。 

1)輸出補助金削減約束の不履行

2)飲用牛乳の輸入 (関税割当) の不履行

 1)については、 カナダが輸出乳製品向けに生産コストを大幅に下回る低乳価を
設定し、 乳製品の輸出を伸ばしているのは、 輸出補助の迂回措置であり、 WTO
協定に基づく約束に違反しているとしている。 これにより、 カナダは、 米国と競
合する市場向けの輸出を急速に伸ばしていると強調している。 

 また、 2)については、 酪農制度上の問題ではないが、 カナダが飲用牛乳向けに
年間64,500トンの関税割当枠を設けたにもかかわらず、 それが履行されて
いないという指摘である。 これに対してカナダ側は、 同国の米国への旅行者が、 
その割当量を満たすのに十分な飲用牛乳を携帯してカナダ国内に持ち込んでいる
と主張しているが、 米国はその説明に納得せず、 合意の履行を怠っていると主張
している。 


● USTR、 WTOに提訴

 なお、 USTRは、 米通商法301条に基づき、 要求書を評価し決定を下すま
でに45日間の猶予が与えられていたが、 USTRは猶予期間満了を待たずして
本要請を受諾する旨表明するとともに、 10月8日、 WTOに提訴を行った。 



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