◇絵でみる需給動向◇
豪州農業資源経済局(ABARE)は、このほど97/98年度(7〜 6 月)の牛肉の 生産および輸出などの実績見込み(速報値)を発表した。 これによると、98年3月末現在の牛の飼養頭数は、前年比2.7%減の2,570万頭 と見込まれている。これは主に豪州南東部の多くの肉牛生産地域で、干ばつ傾向 が98年3月頃まで続いたことにより草地が劣化したため、肉牛農家が牛群の整理 を行ったことが要因の一つと考えられる。また、これまで急成長を遂げていた東 南アジア向けの生体牛輸出がアジアの経済危機の影響で急減し、この分が豪州国 内に振り向けられていることも一因となっている。その結果、97/98年度のと畜 頭数は前年比7.0%増の903万頭とこの十数年間で最高となっており、特に98年に 入ってからは、と畜頭数全体に占める雌牛の割合が5割以上と、かなり高い水準 で推移している。これを受けて、枝肉生産量は前年比3.9%増の188万7千トンに なると見込まれている。
97/98年度の牛肉輸出量は、前年比9.6%増の80万トン(船積みベース)になる ものと見込まれている。最大の仕向先である日本向けは、前年比8.5%増の30万5 千トンとなっており、これは、O−157問題によって低迷した消費が回復してきた こと、また、米ドルに対する豪ドル安により、豪州産牛肉の価格競争力が相対的 に高まっていることなどが背景にある。また、米国向けに関しては、米国内のキ ャトルサイクルが減少局面に入り経産牛のと畜頭数が減少していることなどを背 景に、加工原料用牛肉の輸出が増加傾向にある。 また、輸出量の増加と同時に、輸出価格の上昇によって、輸出金額も前年比24. 4%増の25億 7 千 7 百万豪ドル(約2,242億円:1豪ドル=87円)と大幅な増加 が見込まれている。
なお、ABAREでは、98/99年度の予測も行っている。それによると、と畜頭数は 97/98年度と比較して9.4%減の818万頭、牛肉生産量は4.6%減の180万トンにな ると見込まれている。これは主に、98年4月ごろから広範囲での降雨に恵まれて 草地状態が良好となり、肉牛の保留が進むと見込まれるためである。このと畜頭 数の減少に伴って、牛飼養頭数は同1.2%増の2,600万頭と回復に向かうと予測さ れている。 豪州の肉牛・牛肉生産等見通し 資料:ABARE「Australian Commodities」 注 1 :牛飼養頭数は、各年度 3 月末現在 2 :と畜頭数には子牛を含む 3 :97/98年度は速報値 4 :( )内は前年度比%
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