◇絵でみる需給動向◇
米農務省(USDA)が発表したブロイラーの輸出見通しによると、98年通年の輸 出量(可食重量ベース)は、前年を5.6%上回る223万トン程度になると見込まれ ている。ブロイラー輸出は、海外での需要増に伴ない過去十数年間一貫して拡大 しており、特に90年代に入ってからは毎年2ケタ成長の飛躍的な拡大を示してき た。しかし、97年は香港や日本などの主要なアジア市場が不振であったことから 一転して伸びが鈍化し、98年も鈍化基調は継続するとみている。 ◇図:ブロイラー輸出量の推移(対前年増加率)◇
USDAによると、ソビエト連邦崩壊後に誕生した独立国向け輸出が、ロシア向け 同様近年著しい伸びを示し、中でもグルジア共和国向けが、 1 〜 2 月だけで1 万1千トンと、今年に入り突出した伸びを示している。業界関係者によれば、こ れまで、アルメニアやアゼルバイジャンなどのカスピ海周辺諸国への輸出は、ア ラブ首長国連邦を中継地として行なわれてきたが、同国への輸送経費が上昇した ことからグルジア共和国経由に切り替えたという輸出業者側の事情があるとされ ており、今後コスト面の改善がなされない限り、この傾向はしばらく続くとみら れている。 また、ブロイラー総輸出量の4割以上のシェアを占め、近年の輸出需要のけん 引役であったロシア市場についても、今後引き続き増加が見込まれているものの、 最近、同国の金融情勢が芳しくない状況となっていることから、業界関係者は輸 出への影響を懸念しており、その成り行きを注視している。 USDAは、このほかに輸出増が期待できる市場として、メキシコ、カナダ、南ア フリカなどを挙げているものの、前年の伸び率には及ばないとみている。
こうした状況の中、米国は今年6月から台湾というブロイラーの新たな輸出市 場を確保することができた。それは、今年 2 月台湾の世界貿易機関(WTO)加盟 に向けた米・台 2 国間交渉が合意され、台湾が米国産鶏肉に対し年間 1 万トン の輸入枠を設けることとなったためである。関係団体からの情報などによると、 この合意は、WTO加盟 1 年目に、関税割当数量が年間 1 万9,163トン、関税率25 %に移行し、さらに6年目には割当数量が年間4万5,990トンに拡大、関税率は20 %まで削減されることとなっている。米国の業界関係者は、近年の輸出不振が続 くアジア市場の中で、新たな「輸出枠」を確保できたことに対し歓迎の意を表明 している。
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