米国の牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○バター価格高騰続く


CMEのバター現物取引価格、過去最高を記録

 シカゴ商品取引所(CME)におけるバター(グレードAA)の 6 月の現物取引平
均価格は、前年同月比64.8%高の186.18セント/ポンド(約575円/kg: 1 セン
ト=1.4円)と過去最高を記録した。前月との比較では、ポンド当たり31.53セン
ト(kg当たり約97円)高となっている。

 なお、CMEでは、生産量に占める割合が少ないことを理由に、 6 月19日を最後
にグレード A および B のバターの現物取引を停止している。

◇図:CMEのバター現物取引価格の推移(98年)◇

 一方、5月のバター生産量は、前年同月比10.5%減の4万2千トンにとどまっ
ており、1月からの累計でも前年同期比8.0%減とかなり減少している。今後、生
乳のバター仕向け量の大幅な増加は、あまり期待できないことから、バターの需
給バランスの失調は、当分の間続くものと見込まれている。こうした状況を反映
して、CMEのバターの先物取引価格も上昇しており、 6 月23日には、182.50セン
ト/ポンド(約563円/kg)( 9月限)に達している。


チーズ、アイスクリームの生産増と需給調整機能の低下がバター価格高騰の要因

 バター生産が減少している一方、好調な国内需要の拡大を受けてチーズの生産
が引き続き増加しているほか、国内消費が回復し、輸出も拡大しているアイスク
リームの生産が増加している。こうしたことが、生乳のバター仕向量の確保を難
しいものにしていると見られる。

 また、これまで、加工原料乳に対する価格支持制度として商品金融公社(CCC)
の乳製品の買入れ・売渡しが、米国内乳製品の需給調整を図る上で重要な役割を
果してきた。しかし、96年農業法により、99年末に加工原料乳に対する価格支持
制度が廃止されることとなり、CCCの乳製品買入価格は年々引き下げられている。
バターのCCC在庫(政府在庫)は、95年 8 月以降ゼロとなっており、価格高騰に
対処しうる需給調整機能が働かないことが、今回の需給バランスの失調から容易
に回復できない要因の一つとなっている。

 さらに、乳業会社の団体である国際乳製品協会(IDFA)は、乳製品輸出促進計
画(DEIP)による補助金付きのバター輸出が、国内のバター需給ひっ迫の大きな
要因であると指摘している。


USDA、DEIPの地域別割当数量を公表

 こうした中、米農務省(USDA)は、6月30日、98年7月〜99年6月までのDEIP
の品目別、地域別割当数量を公表した。これによると、各乳製品の割当数量は、
ガット・ウルグアイラウンド(UR)合意の限度数量いっぱいとなっている。地域
別の割合をみると、98年5月に実施された追加割当を含めて勘案した場合、経済
状況の悪化などで乳製品の輸入が減少すると見られるアジア・旧ソ連向けが減少
し、メキシコなどカリブ・中南米向けに重点的に割り当てられている。

DEIPの品目別地域別割当数量

 資料:USDA
 注1:各年度は、 7 月から翌年 6 月まで
  2:97年度追加の欄は、過去 3 年間の未使用枠を98年5月末
    に追加割当したもの


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