◇絵でみる需給動向◇
先ごろ発表されたデンマーク統計局の98年 40 月期の豚飼養頭数調査によると、 EU最大の豚肉輸出国である同国の繁殖用雌豚頭数は、経産および未経産頭数がい ずれも増加したことから、前年同期比4.6%増の123万4千頭となった。前回調査 (98年1月期)で減少した繁殖用雌豚頭数が再び増加し、特に未経産頭数が同9.5 %の高い増加率を示したことにより、今後、同国の肉豚出荷頭数が増加すること は確実で、デンマーク統計局は、98年の豚と畜頭数は、前年比 4 %増の約 2 千 2百万頭と予測している。なお、同国の豚総飼養頭数は、前回に引き続き前年同 期比3.6%増の1,136万 5 千頭となった。 今回の結果から見ると、現在の域内豚肉需給が緩和していることや、主要輸出 先の一つである韓国など一部アジア諸国で通貨急落により輸入需要が停滞してい ることなどから、同国の豚肉価格が低下しているものの、デンマークの養豚農家 が、今後の豚肉需給について楽観視していることの現われとみられる。 デンマークの豚飼養頭数(98年 4 月期) 資料:イギリス食肉家畜委員会(MLC)「European Market Survey」 注:( )内は内数
この背景としては、デンマークの養豚農家が、EU最大の生体豚輸入国であるド イツからの引き合いを、今後とも期待していることが挙げられる。ドイツは、最 大の輸入先であるオランダで昨年豚コレラが発生したことにより、デンマークへ の引き合いを集中させた。今年に入っても、その引き合いは強く、ドイツの貿易 統計によれば、98年第1四半期におけるデンマークからの生体豚輸入頭数(子豚 を含む)は、前年同期比241.7%増の28万 3 千頭となった。 また、昨年大幅に伸ばしたロシア向け豚肉輸出(前年比39.3%増の約11万6千 トン)がさらに増加することを見込んでいるとみられる。ロシアでは、92年に価 格および貿易の自由化や、農業に対する補助金の大幅な削減が行われて以降、国 内の畜産業は大打撃を被り、現在、依然として不振の状態が続いている。こうし た中で、デンマークの王族や農業大臣をはじめとする代表団は4月に、首都のモ スクワなどで同国産豚肉のプロモーション活動を大々的に行った。さらに、デン マークの業界関係者によれば、今後、EU加盟が予定されている中・東欧諸国でも、 長期的には輸入需要があるものと注目している。
しかし、今後、デンマークの養豚農家を取り巻く状況は、彼らの期待にもかか わらず、一層厳しくなることが見込まれる。オランダでは、4月に生体豚輸出が 一部解禁され、5月には国内の移動制限区域がすべて解除されたことにより、ド イツへの生体豚輸出が本格的に行われるようになったことが報告されている。こ れに加え、98年4月期のドイツの豚総飼養頭数は、前年同期比3.2%増の2,520万 8 千頭、繁殖用雌豚頭数が3.5%増の265万 2 千頭となった。また、今年に入り、 米国のロシア向け豚肉輸出が大幅に増加していることが伝えられている。 さらに、ドイツ市場価格情報センター(ZNP)によれば、98/99年度( 4 月か ら3月)のEU15カ国の豚と畜頭数は、前年同期比6%増の2億頭以上と予測され るなど、今後もしばらくの間、域内豚肉需給の緩和が予想される。フランスやア イルランドの業界関係者からは、現在、域内の豚肉需給引き締め対策として、骨 なし豚肉に対する輸出補助金の復活や豚肉の民間在庫補助制度の発動などを求め る声が出てきている。このような状況から、デンマークの豚肉価格は一層低下す ることと思われ、同国の養豚農家の増頭意欲は減退に向かう可能性があるとみら れる。
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