地球温暖化防止に向けた農業への取組みを報告(EU)


2008年〜12年で温室効果ガスの総量を90年レベルから 8 %削減

 昨年開催された地球温暖化防止京都会議の締約国は、温室効果ガスの排出量の
削減に合意した。EUは2008年〜12年の間に、二酸化炭素 (CO2)、メタン(CH4)、
亜酸化窒素(N2O)など 6 種類の温室効果ガスの総量を90年レベルから 
8%削減することを約束している。これを受けて、EU委員会は今般、農業、運輸、
エネルギーなどの分野で削減約束実施に向けた施策の枠組みを設定するため、そ
の基本的な考え方を取りまとめた報告書をEU理事会などに提出した。


農業分野は温室効果ガス総排出量の 8 %を占める

 この報告書によると、農業分野における温室効果ガスの排出状況は、次の通り
である。

1 EUの主要な温室効果ガス(二酸化炭素、メタンおよび亜酸化窒素など)の総
 排出量の 8 %を占める。

2 特に、メタンおよび亜酸化窒素については、EUの総排出量のそれぞれ45%お
 よび40.3%を占める(90年)。

 メタンについては、家畜の消化過程におけるゲップやふん尿が主要な発生源で
あり、亜酸化窒素については、肥料が主な発生源であるとされている。


農業が化石燃料をバイオマスに変換する機能などを報告

 一方、温室効果ガスの削減目標を達成するため、林業も含めた農業分野が持つ
潜在的な削減可能性については、化石燃料(石油、石炭、天然ガスなど地中に埋
蔵されている再生産のできない有限性の燃料資源)をバイオマス(植物などエネ
ルギー資源として利用できる生物体)に変換し、シンク(吸収源、光合成による
固定や水への吸収を示し、発生源に対する用語)としての機能により、特に二酸
化炭素を除去する役割を果たすと述べられている。


削減目標の達成に向け、集中的な研究の推進などを掲げる

 次に、温室効果ガス削減目標の達成に当たって、EUが農業分野においてまず着
手する必要のある対策が次の通り掲げられている。

1 集中的な研究を推進すること。

2 農村開発を行う中で適切な植林を行うこと。

3 自主的に休耕する代わりに、再生可能なエネルギー穀物を生産することによ
 り、エネルギー源を石油などの化石燃料からバイオマスに切り替えること。

4 メタンの排出削減については、@家畜のふん尿処理方法の改善と貯蔵を進め
 るための農村開発投資に助成すること、A家畜飼養の改善に関する研究を奨励
 すること。

5 窒素酸化物の排出削減については、@CAP(共通農業政策)改革案で提案され
 ている農産物の介入価格の引き下げを通じて、農業分野における窒素酸化物の
 主たる発生源である肥料の使用量を削減すること、A農業と環境保護措置を一
 層推進し、肥料の削減と有効利用を実現すること、B条件不利地域対策の推進
 により、投入量の少ない農業生産体系や環境保全型農業の維持強化を図ること、
 C(CAP改革案で)提案されている直接所得補償制度の運用に当たり、施肥に関
 する条件を遵守した場合、加盟国が積極的に補助金を交付すること。

 なお、EU委員会は、来年の上半期に、域内での温室効果ガスの削減に向けた取
り組みの進ちょく状況を取りまとめることとしている。


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