NSW州、飲用乳制度の継続を決定(豪州)


今後5年間飲用乳制度を継続

 ニューサウスウェールズ(NSW)州政府は、先般、同州における飲用向け生乳の
生産割当および乳価(農家受取価格)設定に関する現行の制度を、2003年までの
5年間、引き続き実施することを決定した。

 この制度は、同州の飲用乳規則(Dairy Industry Act)に基づき運用されてい
るものであるが、この6月末で執行期限が切れることから、政策全般の規制緩和
が推進されつつある中で、その継続が懸念されていた。今回の決定により、生乳
供給に占める飲用向けの割合が高く(約50%)、本制度によって高乳価の恩恵を
受けている同州の約1800戸の酪農家の不安は、ひとまず、取り除かれたことにな
る。


VIC州の動向によっては、今回の決定の見直しも

 しかし、これで同州の飲用向け生乳に係る制度が、今後5年間、確実に維持さ
れると保証された訳ではない。それは、豪州の場合、飲用乳に関する規則は州ご
とに定められているため、隣接する他州の制度や乳価の影響を常に受けざるを得
ないためである。

 NSW州に隣接するビクトリア(VIC)州にも、飲用向け生乳の生産および価格規
制が存在しているが、5月下旬、同州の酪農生産者連盟(UDV)による年次総会が
開催され、当該規制の撤廃(または大幅緩和)を推進する立場をとる現執行部が
満場一致で再選された。

 VIC州は、豪州全体の60%以上の生乳を供給する最大の酪農州であるとともに、
生産コストが低く、生乳供給に占める加工向けの割合が極めて高い(約92%)。
従って、仮に、VIC州で飲用向け生乳の生産・価格規制が撤廃され、またはその価
格が大幅に引き下げられた場合には、他州に大量の飲用乳(製品)が流入する可
能性が極めて高くなる。さらに、VIC州は全酪農家のプール生産方式をとっている
のに対し、NSW州は飲用向け生乳を酪農家ごとに割り当てる方式を取っている。こ
のため、飲用向け生乳の規制緩和が個々の酪農家に及ぼす影響は、後者の方がは
るかに大きい。

 このため、NSW州は、VIC州の今後の動向いかんによっては、今回決定した飲用
向け生乳の価格支持政策の見直しを余儀なくされる可能性もある。


国内価格支持交付金制度の見直しにも注目

 一方、豪州では、連邦全体の制度として、95年7月から加工原料乳に対する価
格補填制度(国内価格支持交付金制度)が実施されており、VIC州の生産者は、そ
の恩恵に浴しているという事情がある(その財源の一部は飲用向け生乳からの課
徴金)。

 このため、UDVは、NSW州などの生産者が注目する中、今後、連邦制度の見直し
期限(2000年6月)を念頭に置きつつ、州政府との交渉を進めていくものと思わ
れる。



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