局地的な干ばつ、肉牛生産などに被害(NZ)


農業生産に大打撃

 ニュージーランドでは、北島および南島の東部海岸地方で、本年5月まで干ば
つによる農業生産の被害が深刻化した。これらの地域では、既に昨年末から雨不
足が指摘されていたが、本年 1 〜 2 月には極めて暑い乾燥した気象となった上、
それ以降もほとんど降雨に恵まれず、事態がさらに悪化した。5月末に同国農林
省が各地の干ばつ対策関係者を招集してまとめた情報によると、その被害総額は
農業全体で約25億NZドル(約1,850億円:41 NZドル=74円)に達したと見込まれて
いる。


肉牛生産に被害

 エルニーニョの終息とともに、 6 月下旬から 7 月上旬にはほとんどの地域で
降雨があったが、5月末までの干ばつの被害状況をみると、畜産分野では特に肉
牛生産が大きな被害を受けている。これは、今回の干ばつが、北島東部のギズボ
ーン地方など、NZの肉牛生産の中心地域に集中したためである。肉牛生産者は昨
年末以来、干ばつ長期化の気象予測を受けて、乾草、サイレージなどの冬季用補
助飼料を最大限に備蓄したが、干ばつが予想以上に長期化したことに伴い、次第
にそれらも底を突くに至った。これらの地域では、一部で降雨があったにもかか
わらず、引き続き牧草の劣化が著しいと言われている。民間の農業コンサルタン
トの試算によると、補助飼料価格の上昇に伴い、冬季の牛群維持には一戸当たり
平均約2万〜2万5千NZドル(約148〜185万円)の飼料費支出が必要になるとさ
れており、多くの肉牛農家は、極めて苦しい選択を迫られていた。


経産牛と畜頭数の急増で牛群縮小の懸念

 こうした状況を反映して、5月までの数ヵ月、成牛のと畜頭数が急増した。農
林省の調査によると、今年5月第2週までの牛と畜頭数は、前年同期比8.4%増の
145万頭となり、特に、経産牛については、同27.6%増の61万頭に達したと報告さ
れている。

 これらの牛群の縮小傾向は、来シーズン以降の牛肉生産に不安を投げかけてい
る。一部の関係者は、酪農部門から充分な素牛が供給されると期待しているが、
一方、98年7月 1 日時点の牛飼養頭数は、前年同期の484万頭から約2.5%減少す
ると見込まれており、飼養頭数が回復するまでには数年を要するとの見通しもあ
る。


政府は干ばつ救済策を講じる

 政府はこうした状況に対応して、本年既に、地域経済対策および干ばつ対策本
部の運営費用を中心に約250万NZドル(約 1 億 8 千 5 百万円)の干ばつ救済策
を講じた。また、5月には農業大臣が被害地域を視察し、新年度にも、引き続き、
約37万NZドル(約 2 千 7 百万円)の追加救済策を講ずることを約束した。なお、
7月には一転して北島および南島で洪水の被害が伝えられるなど、両極端な気象
状況が政府をはじめ農業関係者を脅かしている。


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