陰りが見える家きん肉産業(中国)


急激な増産で価格低落

 中国の鶏肉、ブロイラーを主とする家きん肉価格が低落傾向を強めている。中
国の家きん肉生産は、近年の経済成長に後押しされた好調な消費に支えられて目
覚しい発展を遂げてきた。特に90年代前半の発展は顕著で、90年から96年の6年
間に豚肉、牛肉および羊肉の生産量の合計が89.9%の増加であったのに対して、
家きん肉は約3.3倍にも増えている。また、食肉全体に占める割合も11.4%から18
.4%に拡大している。中国では伝統的に豚肉が最も多く食されてきたが、消費者
の購買力の向上に伴い、かつては高価で「晴れ」の食材であった鶏肉に消費が幾
分シフトしている。

 しかしながら、急速な投資や近年の穀物の豊作による家きん肉の生産増加があ
まりにも急激であったために、供給過剰による価格の低落が目立ってきている。
また一説には、伝統的な庭先飼いの家きん肉に慣れ親しんだ消費者が、ブームで
ブロイラーに飛びついたものの、味や歯ごたえなどが嗜好に合わないため、最近
では「伝統的家きん肉」に回帰しているという見方もある。98年4月の自由市場
におけるブロイラー丸鶏およびひなの小売価格(全国指定地区の平均値、中国農
業部調べ)はそれぞれ前年同月比6.7%安、16.3%安となっている。

食肉生産量の推移

 資料:中国統計年鑑


都市部で消費が停滞

 一人当たりの家きん肉消費量の推移を見ると、都市部では消費の伸びが停滞し
ているのに対して、農村部ではまだ増加の余地がみられる。これは、外資が参入
し易く輸出市場をも見込んだブロイラー企業が、多くの都市を有する沿岸部に立
地することが多いため、供給が潤沢な都市の住民の消費が、先に飽和状態になっ
たものと考えられる。また、引き続き消費が伸びている農村部にあっても伸び率
は急激に鈍化しており、今後、国内での消費の増加を農村部がけん引するとして
も、これまでのような伸びが「復活」するかどうかは予測が難しいところである。

一人当たり家きん肉年間消費量の推移

 資料:中国統計年鑑


輸出不調も深刻、98年 1 〜 5 月は23%減

 一方、98年 1 〜 5 月の冷凍家きん肉の輸出量は、前年同期比23.4%減の9万
11千トンとなった。97年通年の輸出量が前年比1%減にとどまったことからみて、
輸出不振が深刻化していると言える。

 また、わが国の輸入統計から中国産家きん肉の輸出動向をみると、平成9年度
は、平成6年度に二国を抜いて対日輸出がトップの座に躍り出て以来、初めて前
年度実績を割り込む結果となった。輸出が落ち込んだ要因としては、競合相手国
であるタイの通貨バーツが97年7月以降急落し、タイ産鶏肉の輸出競争力が強ま
ったこと、97年末に香港で発生した鳥インフルエンザへの懸念から中国産鶏肉が
敬遠されたことなどが挙げられる。なお、冷凍品が家きん肉輸出のほとんどを占
めるが、我が国への距離的な有利さから中国の独壇場となっている冷蔵品につい
ても、辛うじて前年度水準を維持するにとどまった。

冷凍家きん肉の輸出量の推移

 資料:中国海関統計
  注:冷蔵品のデータはない


ブロイラー消費の促進が重要

 以上のように、家きん肉が増産基調にある中、国内消費の陰りと輸出の不調か
ら、中国の家きん肉産業は短期的には不振が続くと予想される。現地報道によれ
ば、多くの養鶏農家、ブロイラー企業が経営不振に陥っていると伝えられており、
政府がこれまで増産に貢献してきたブロイラー産業に政策上で関与するとともに、
ブロイラーの消費を促進すべきであるとの声が上がっている。


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