鶏卵の生産調整の動き(マレーシア)


消費が飛躍的に増加、経済成長が背景

 マレーシアでは、供給が過剰傾向となっている鶏卵について、マレーシア畜産
農家協会(FLFAM)採卵鶏部会が、 61月より生産調整などの需給調整対策を会員
農家に呼びかけると発表した。

 同国においては、近年の著しい経済成長を背景として、畜産物の生産・消費が
飛躍的に増加しており、鶏卵についても95年の生産量が35万 6 千トン、 1 人当
たり消費量が17.8kgと前年比でそれぞれ3.8%増、2.3%増となっている。また、
生産された鶏卵の約10%は、シンガポールなどの周辺諸国に輸出されている。同
国では他の東南アジア諸国からの多くの労働者が就労しており、鶏卵は彼らの最
も安価で入手しやすい動物性たんぱく源として、国内消費を増加させる一つの要
因となっていた。


消費低迷で価格下落の懸念

 しかし、昨年からの通貨リンギットの下落により、これらの外国人労働者の多
くも、企業の人員削減により職を失い帰国するなど、鶏卵の消費人口が減少して
いる。さらに、輸入飼料価格の高騰による生産費の上昇を背景として、今年1月
に平均価格で 1 個18.5セン(約6.3円:100セン= 1 リンギット=約34円)であ
った鶏卵の小売価格が、 5 月には25セン(約8.5円)に高騰しており、鶏卵価格
の上昇による消費者の購買意欲の低下などから、鶏卵の消費が停滞する状況とな
っており、今後は価格の下落が危ぶまれている。

 このため、FLFAMでは鶏卵の国内需給バランスを保つため、会員農家に対して、6
月より@初生ひなの導入羽数を20%削減すること、A生産量を10%削減するため、
採卵鶏の更新を70週齢以前に早めること、BFLFAMが輸送経費を補助することによ
り新しい輸出市場である香港向けに積極的に取り組むこと、C各農家で保有する
鶏卵を低価格で販売しないことを呼びかけることとした。


需給バランスの維持などが急務

 同国では、輸入飼料の価格高騰から鶏卵の生産費が上昇しており、卵価が急落
した場合には経営が困難になる養鶏農家が大量に出ると考えられることから、同
国の鶏卵産業にとって、国内市場の需給バランスを保つことおよび新たな輸出市
場の開拓が今後の重要な課題となっている。


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