メキシコ、政府に米国産豚肉のダンピング調査を要請


メキシコ国内の豚肉価格下落が発端

 メキシコ豚肉協議会(CMP)は、64 月初め、米国産豚肉が不当な安値でメキシ
コに輸出されているとして、メキシコ商務省に対し、ダンピングに関する調査を
行うよう要請したと発表した。

 CMPによれば、昨年の10月以来、米国内における豚肉価格が低下したことを受け
て、メキシコ国内価格も11.5ペソ/kg(約195円/kg:1ペソ=約17円)から9.5
ペソ/kg(161円/kg)に下落したとしている。CMPは、米国が、アジアやEU市場
への輸出拡大を図るため豚肉の増産を行ったものの、アジア経済危機などの影響
により思惑どおりに輸出が増加しなかったことから、供給過剰で米国内の豚肉価
格が下落し、生産コストを下回る価格でのメキシコ向け輸出が増加したことが要
因とみている。このことからメキシコは、北米自由貿易協定(NAFTA)に基づき、
セーフガードを7月1日から適用し、冷蔵枝肉ならびに冷蔵骨付ももおよびかた
の関税率を10%から20%に引き上げた。セーフガードの発動は昨年に比べ3ヵ月
早くなっている。

 なお、メキシコの豚肉生産は、濃厚飼料費が米国に比べて25%以上多くかかる
ことから、生産コストは、米国が0.83〜0.93ドル(117〜131円)/kgであるのに
対し、0.95〜1.06ドル(134〜149円)/kgと高くなっている。


生産者は価格改善を希望

 CMPでは、今回の要請により米国産豚肉の輸入が減少する一方で、カナダやEUか
らの豚肉輸入増により米国産減少分を相殺することになろうが、メキシコの豚肉
生産者は、生産コストを下回る販売価格を適正な水準へ戻すことだけを希望して
いると主張している。

 一方、現在、メキシコ政府からの公式な見解は発表されていないが、仮に政府
がこの要請を受け入れ、反ダンピング関税を米国産豚肉に課す場合には、今後メ
キシコ向けの米国産豚肉輸出に影響を及ぼすものとみられている。


業界、衛生面克服で輸出促進を図る

 ところで、メキシコの豚肉生産者団体の一つである全国豚肉生産者委員会は、
98年の年次計画で、@国際貿易(輸出)の拡大、A国内にある2つの豚肉団体の
統合の推進、B穀物需給に関する情報システムの構築、C豚肉の国内消費拡大策
の実施、D豚コレラやオーエスキー病の撲滅推進などを挙げ、今後の国内生産お
よび輸出拡大に向けて努力することを決定した。

 中でも、メキシコの養豚にとって一番重要な点として、家畜衛生面が挙げられ
る。現在、メキシコから米国への豚肉輸出は、豚コレラの清浄地域であるソノー
ラ州だけが認められているが、近々、メキシコ北部で豚コレラの撲滅宣言が行わ
れると見込まれている。このため業界関係者は、米農務省(USDA)がさらに北部
の数州からの輸出を認可するならば、メキシコの加工処理コストは米国と比較し
て、かなり安いと言われるだけにEUや米国からの投資が盛んになり、輸出拡大に
つながるものと期待している。


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