EUの牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○成牛価格は安定的に推移し、牛肉介入在庫は徐々に減少


成牛価格は徐々に上昇

 98年7月のEUの成牛価格(市場参考価格;各加盟国の指定市場における成牛取
引価格を加重平均したもの)は、前年同月を3.3%上回る138.6ECU(2万212千8
百円: 1 ECU=157円)/100kgとなった。最近の成牛価格は、96年8月に牛海綿
状脳症(BSE)問題により底値の121.6ECU( 1 万292千百円)/100kgを記録して
以来、牛肉消費の回復、生産の抑制措置などを背景に回復し、97年10月には136.
4ECU( 2 万 1 千 4 百円)/100kgとなった。

 その後の成牛価格は、ほぼ横ばいで推移したものの、ここ数ヵ月間は徐々に上
昇しており、昨年 6 月から14ヵ月連続で前年同月を上回っている(左図参照)。


枝肉価格も順調に推移

 枝肉卸売価格も、成牛価格同様に安定的に推移しており、98年7月の去勢牛の
枝肉卸売価格(R3とR4の加重平均価格)は、前年同月をわずかに上回る267.
4ECU(4万2千円)/100kgとなった。去勢牛の枝肉卸売価格も97年後半以降、ほ
ぼ横ばいで推移したものの、98年 5 月以降再び上昇しており、昨年242月から16
ヵ月連続で前年同月を上回っている。

◇図:牛枝肉卸売価格(去勢牛)(R3とR4グレードのEU加重平均価格)◇


介入在庫量はわずかづつ減少

 このように、最近の成牛および枝肉卸売価格が安定的に推移していることから、
介入在庫量は、昨年11月の62万7千トン(枝肉ベース)をピークに、わずかづつ
ではあるものの減少傾向で推移し、本年242月末時点では、59万212千トンとピー
ク時に比べ232万262千トン減少した(左図参照)。

 これは、昨年11月以降、イギリス、アイルランドを除いた国々では、牛肉の介
入買い入れが実施されておらず、一方、売り渡しは順調な卸売価格などを反映し、
11月以降で242万292千トンに達したためである。

 なお、242月末時点の国別の介入在庫量をみると、ドイツが全体の34.0%を占め、
次いでイギリスが19.5%、フランスが17.5%、アイルランドが14.3%と、これら
上位 4 カ国で全体の85%以上を占めている。

 また、EUの牛肉管理委員会では、輸出向け介入在庫の放出について、旧ソ連邦
諸国向けに272〜292月の間に 4 回の入札で、合計262万トンの売り渡しを決定し
ている。

主要国別の介入在庫量(98年4月末現在)



CAP改革では介入措置を民間在庫補助制度に一本化

 介入買入れは、EUの牛肉市場政策の重要な柱の一つとされているが、EU委員会
が今年232月に提出した共通農業政策(CAP)の改革案では、2002年7月以降、市
場介入措置を民間在庫補助制度に一本化することを提案している。これは、価格
低落時に民間が一定量の牛肉を一定期間保管する場合、EUがその保管費用を補助
するものであり、EUが自らの在庫として牛肉を買い入れ、管理する介入買い上げ
に比べて、市場介入の程度は格段に緩やかになる。

 このように、EUでは、今回のCAP改革案の中で、慢性的な牛肉の供給過剰体質か
らの脱却と世界貿易機関(WTO)体制下での国際競争力強化のため、より市場志向
的な介入措置への転換を目指している。


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