タイの鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○下半期に減退した97年の鶏肉消費


通貨下落の影響により、7.7%増にとどまった鶏肉消費

 タイ農業協同組合省は、97年の鶏肉の国内消費量を公表した。これによると、
消費量は、 4 億 9 千 6 百万羽で前年比7.7%の増加となった。これを四半期ご
とにみると、第 1 四半期は前年同期比30.2%増、第 2 四半期は同19.3%増とそ
れぞれ順調に消費が拡大し、上半期は同24.7%の増加となった。しかし、97年7
月からの通貨バーツの下落は、 9 月以降の消費に大きな影響を与えた。第 3 四
半期の消費は、同1.6%減となり減少はわずかであったものの、12月に前年同月比
14.8%減となったことなどにより、第4四半期は同10.5%減と大幅に減少し、下
半期は同5.6%減となった。

 一方、同年の鶏肉生産量は、通貨下落の影響を受けて 9 月以降減少したものの、
上半期に大幅な増産になったことから、7億6,488万羽、前年比8.5%の増加とな
った。また、鶏肉の輸出量は、冷凍鶏肉が15万8百トン、前年比9.9%の増加とな
り、93年以降続いていた減少に歯止めがかかった。なお、97年の鶏肉の需給状況
は下表のとおりである。

97年タイの鶏肉需給

 注1:生産量、国内消費量は農業協同組合省
  2:輸出量のうち、冷凍鶏肉はタイ大蔵省、
    鶏肉調製品はタイブロイラー加工輸出業者協会


98年上半期の鶏肉輸出は、 5 割増

 タイブロイラー加工輸出業者協会が取りまとめた98年上半期の鶏肉輸出動向
(速報)によると、鶏肉の輸出量は、前年同期比47.0%増の12万7千トンとなっ
た。このうち、冷凍鶏肉の輸出量は、日本向けが同33.1%増の6万2千トン、EU
向けが同41.2%増の 2 万 5 千トンと大幅に増加したことなどにより、同43.6%
増の10万1千トンとなった。また、鶏肉調製品は、97年上半期の日本向けの伸び
率が 3 割増であったのに対し、今期は同10.5%増の1万 6 千トンと伸び率は鈍
化したものの、EU向けが前年同期の5倍の1万1千トンとなったことにより、61.
9%増の 2 万6千トンとなった。なお、今後の輸出価格については、トン当たり
1千 6 百〜 1 千 7 百USドル(約22万7千円〜約24万 1 千円: 1 USドル=141.
6円)であった骨なしもも肉の対日輸出価格を、タイの鶏肉加工業者が競争相手国
である中国、ブラジルの輸出価格をわずかに下回る同2千ドル水準まで引き上げ
て契約獲得にのぞんでいる。

 一方、タイの鶏肉輸出業者によると、最近、日本の需要者は、製品価格の引き
下げのためのコスト削減策として、在庫量を減らすなどして厳しく流通経費の見
直しを図っている。この影響を受けてタイの輸出業者は、需要者から在庫の保管
期間が短くなるようなデリバリーを要求されており、これまで以上に厳格なシッ
ピングスケジュールが求められている。ある輸出業者によると、シッピングスケ
ジュールのわずかな遅れにより、需要者への原料供給が間に合わなかったため、
航空機による輸送で間に合わせた例もあったとしている。従前は、鶏肉のような
安価な食材を航空機で輸送するようなケースはなかったとのことである。


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