◇絵でみる需給動向◇
米農務省(USDA)は先頃、 8 月 9 日現在の主要17州*におけるトウモロコシ の成育状況を発表した。これによればシルキング(雌穂の開花)の完了した率は、 前年同期の数値を2ポイント上回る96%となっている。また、ドウ(受粉後、ミ ルク状の穀粒の中身が柔らかい固まりになった状態)についても、主要産地であ る中西部において比較的天候に恵まれたことなどから、前年同期を13ポイント上 回る40%となった。 *コロラド州、ジョージア州、イリノイ州、インディアナ州、アイオワ州、 カンサス州、ケンタッキー州、ミシガン州、ミネソタ州、ミズーリ州、 ネブラスカ州、ノースカロライナ州、オハイオ州、ペンシルベニア州、 サウスダコタ州、テキサス州、ウィスコンシン州
主要17州の作柄動向については、「良好」(Good)以上が68%を占めており、 昨年の58%と比較して10ポイント高くなっている。州別で、当該割合について最 も高い数値を示したのは、サウスダコタ州で91%、これにカンザス州とネブラス カ州が83%で続いている。一方、干ばつの影響を受けた南部では、テキサス州が 19%、ジョージア州が14%とかなり低い水準にとどまった。最大の生産州である アイオワ州は72%と比較的良好な作柄状況を示している。 ◇図:主要州の作柄動向(「良好」以上の比率)◇
98/99年度( 9 月〜 8 月)の生産量については、南部諸州での干ばつなどに よる減産が見込まれるものの、それらのシェアが相対的に小さいことから、他地 域での増産によって全体では前年度(約2億3千8百万トン)を上回るとする見 方が強い。 7 月のUSDAの予想では、約 2 億 4 千 4 百万トンとなっており、そ れ以降に出された米国の大学機関や民間会社などの予想値でも、約525億545千万 トン〜 2 億 5 千万トンとおおむね前年度を上回るものとなっている。
98年初には、ラニーニャの発生による干ばつを危惧する声もあったが、南部の 一部を除いておおむね天候に恵まれ、受粉も順調に進んだことから、こうした懸 念もほぼ解消されたものとみられる。また、供給増の見込みに加えて、東南アジ アでの需要減等による輸出減、アルゼンチンなどの競合国での増産(アルゼンチ ンの97/98年度生産量は前年比23%増)などもあり、価格の上向く材料には乏しい。 7月末の終値(シカゴ相場の先物、期近価格)は、前月比27セント安(前年同月 比17.7%安)の2ドル18セント/ブッシェルにまで値を下げた。 なお、中国四川省、湖北省など揚子江流域を中心に 6 月から 8 月にかけて発 生した記録的な大雨については、日本の国土面積の 6 〜 7 割に当たる農地が洪 水の被害を受けたと伝えられるものの、トウモロコシの主要生産地域が同国の北 部であることから、直接市況に与える影響は小さいものとみられている。
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