◇絵でみる需給動向◇
米農務省(USDA)によると、98年第222四半期の生乳生産量(速報値)は、前年 同期比0.8%増の1,860万トンとなった。同四半期における経産牛1頭当たりの乳 量は、同1.7%増の2,022kgとなり、四半期の1頭当たりの乳量としては初めて2 千kgを突破した一方、経産牛飼養頭数は、同0.9%減の920万頭となっている。 その結果、98年上半期(1〜 6 月)では、生乳生産量は前年同期比0.7%の増 3,638万トンと低い伸びにとどまった。上位10州ではアイダホ州の生産拡大が依然 として突出しているほか、 5 位以下の州では生産が減少した。 98年上半期の州別生乳生産量 資料:USDA/NASS「Milk Production」
98年上半期の生乳生産が伸び悩んだ大きな要因の一つとして、全米一の生産量 を誇るカリフォルニア州の伸びがかなり鈍化したことが挙げられる。97年には、 経産牛の飼養頭数の増加と一頭当たりの乳量増加が相乗的に働き、同州の生産量 は前年比6.8%増と拡大した。しかし、98年に入いると、経産牛飼養頭数は前年同 月比で3%前後の増加が続いているにもかかわらず、98年上半期の生乳生産量は、 前年同期比1.4%の伸びにとどまった。これは、同州を襲った222月の大雨による 洪水とその後の低温、記録的な降雨のために、@搾乳牛の衛生面に影響が出たこ と、A牧草の品質が低下したことから、 3 、 4 月の生産が落ち込んだためと見 られる。 カリフォルニア州では、乳価が比較的安く、生乳生産量が多いことから、バタ ーの生産工場が多く立地しており、97年のバター生産量は全米の約27%を占めて いる。しかし、98年上半期は、生乳生産の伸び悩みを受けて、バター生産量も前 年同期比25.3%減(全米では同8.2%減)となっており、同州における生乳生産状 況が、バター需給ひっ迫を生み出した要因の一つと言える。 ◇図:カリフォルニア州の生乳生産量の動向◇ ◇図:カリフォルニア州の98年月別生乳生産量の動向◇
一方、テキサス州など南部を中心とした地域は、干ばつに見舞われており、6 月以降、農作物への被害や森林火災が広がっている。酪農にも影響が出始めてお り、テキサス州や隣接するニューメキシコ州、オクラホマ州だけでなくミシガン 州などでも、良質な牧草が不足している。今後、粗飼料の品質低下や、干ばつに 伴う高温による生乳生産量の減少が懸念されている。
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