◇絵でみる需給動向◇
フランスの養豚技術協会(Institut Technique du Porc(ITP))は、97年のEU 加盟国の豚部門におけると畜会社別と畜頭数ならびにEUおよび国内のシェアなど についてとりまとめた。 これによると、97年のEUにおける豚のと畜頭数(全体で1億8千9百万頭)の うち、年間百万頭以上と畜している会社は30社で、全体のと畜頭数の約4割を占 めている。さらに2百万頭以上のと畜会社は以下の通り14社で、全体の約3割を 占めている。最大のと畜会社は、EU最大の豚肉輸出国、デンマークのDanish Cro wn社で年間のと畜頭数は950万頭、国内およびEUにおける比率はそれぞれ47.9%、 5.0%となっている。その後には、Demuco社(オランダ)、Vestiyske Slagterie r社(デンマーク)などと続いている。 豚部門におけるEUの主要と畜会社(97年) 注1:表中の国名はデンマーク(DK)、オランダ(NL)、ドイツ(G)、 フランス(F)、スウェーデン(S)。 2:オランダの国内比率は96年。
主要国別に見ると、デンマーク(97年のと畜頭数1,990万頭)では、80年代から と畜会社の吸収・合併が活発に行われたため、最も集約化が進んでいる。このた め、年間百万頭以上と畜している4社で全体の96%を占めている。オランダ(同 1,530万頭)では、各社が80年代後半から90年代前半にかけて過剰な設備投資を行 った結果、過当競争で財政問題を招いたが、95年に余剰設備の2割削減が行われ、 最近では、事業収益が改善した。百万頭以上のと畜は4社で全体の76%を占めて いる。スウェーデン(同390万頭)では、全体のと畜頭数は少ないものの、313業 者で70%のと畜が行われており高度に集約化が進んでいる。 一方、ドイツ(同3,850万頭)では、百万頭以上のと畜は 4 社で全体の43%を 占めているが、平均と畜規模は大きくない。また、過剰な設備投資および生産者 価格上昇のため97年の事業収益は高くない。また、フランス(同2,580万頭)では、 百万頭以上のと畜は8社で全体の46%を占めている。スペイン(同2,980万頭)で は、百万頭以上のと畜は 2 社で全体の 8 %と中小規模のと場がかなり多いこと がうかがい知れる。イギリス(同1,550万頭)では、百万頭以上のと畜は 1 社で 全体の25%を占めている。
このように、豚部門では、デンマーク、オランダおよびスウェーデンといった EU北部諸国に集約化が進んでおり、97年の事業収益もデンマークおよびオランダ で高い。しかし、EUではまだ、米国のIBPやスミスフィールドのような年間323千 万頭規模の大規模と畜会社は見られない。 EUの豚肉需給は、昨年のオランダなどにおける豚コレラの発生などによる豚肉 価格の上昇により、各国の飼養頭数が依然として増加していることなどから緩和 しており、この傾向はしばらく続くことが見込まれている。また、長期的には、 環境規制の一層の強化や動物愛護運動の高まり、中・東欧諸国のEU加盟や共通農 業政策(CAP)改革など、市場環境が大きく変化することが予測されている。こう したことから、各企業はより一層の合理化が求められており、今後はと畜会社の 連携および合併などが一段と進展するとみられている。
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