海外駐在員レポート 

豪州食肉業界の再編の全容とその影響について

シドニー駐在員事務所  野村俊夫、藤島博康




1 はじめに

 豪州では、本年6月末をもって旧豪州食肉畜産公社(AMLC)、旧食肉研究公社
(MRC)および旧食肉産業協議会(MIC)の3団体が解散し、翌7月1日から、新
たにMLA(Meat & Livestock Australia Limited)を中心とする、新しい食肉(牛
肉・羊肉)産業体制がスタートした。

 今回の再編の特徴は、端的に言えば、これまで食肉業界の中心にあった公的機
関を民営化することにより、業界自身が関連政策に直接関与できる範囲を広げた
ことと、食肉業界内の各セクター(肉牛・羊生産者、フィードロット、パッカー、
生体輸出業界)が、それぞれ独立志向を強め、縦割りの業界構造が強化されたこ
とにある。

 今回は、この再編の全体像について説明するとともに、今後、豪州食肉業界に
及ぼすと予想される影響について考察してみたいと思う。


2 再編の背景

 豪州食肉業界の歴史的な変革とも言える今回の再編の背景には、政府の業界指
導体制に対する、肉牛・羊生産者や、フィードロット経営者、パッカーなどの長
年にわたる不満の蓄積があった。

 今回解散した3団体の中でも、特に、旧AMLCは、その前身まで含めると、20年
以上にわたり、法律に定められた公的機関として、豪州食肉業界の中心となって
活動してきた。

 そして、その間、豪州の牛肉輸出は、国際経済環境の変動による影響を受けな
がらも、我が国の牛肉輸入自由化やガット・ウルグアイ・ラウンドの決着などを背
景に、概ね順調に拡大してきた。

 しかし、一方では、牛肉の国内消費が大幅に停滞し、また、生産コストが上昇
する中で、肉牛の価格がそれに見合う水準となり得なかったことから、クイーン
ズランド州などを中心とする生産者の間に、課徴金の使途等に対する強い不満が
蓄積していたことも事実である。

 また、パッカー業界においては、家畜の総飼養頭数が伸び悩む中で、過去の成
長期になされた設備投資が施設の過剰を招き、工場稼働率の低下となって経営を
圧迫している。このため、特に中規模以下のパッカーにおいては、施設の老朽化
が進んでいるにもかかわらず、必要な設備投資が行えず、深刻な経営難に直面し
ている業者も多いと言われている。

 このため、豪州では、食肉業界のそれぞれのセクターにおいて、業界指導体制
に対する政府への不満が一様に蓄積され、その抜本的な見直しを求める意見が強
まっていた。


3 食肉産業戦略計画

 こうした中で、96年7月、旧MICは、政府と協力して「食肉産業戦略計画(Meat 
Industry Strategy Plan:MISP)」を策定した。

 これは、96年から2001年までの5年間を対象として、不振にあえぐ豪州食肉業
界を再生させるべく、6つの重点目標を定めた、言わば食肉業界全体の長期総合
戦略である。これらの重点目標は、@最良のマーケティングの達成、A美味しさ
の追求、B安全性の保証、C安定した品質の製品の供給、D最良の産業構造の確
立、E管理指導体制の改善、とされており、現在の豪州食肉産業関連政策の大部
分は、このMISPに基づいて実施されている。

 そして、この重点目標の最後に掲げられた食肉業界の管理指導体制の改善とい
う項目が、今回の業界再編の具体的な出発点となった。


4 1997年豪州食肉家畜産業法

(1)行政権限の一部を政府に移管

 その後、97年には、MISPの目標のひとつである食肉業界の管理指導体制の改善
という項目を具体化するための法律として、「1997年豪州食肉家畜産業法(Aust
ralian Meat and Live-stock Industry Act 1997 )」が制定された。

 同法では、まず、従来、AMLCなどによって行われていた業務をできるだけ民間
に移すという基本方針に基づき、民間の組織には馴染まない一部の行政権限を政
府の管轄下に移管することとなった。

 具体的には、これまで旧AMLCの管轄下にあった食肉の輸出ライセンスおよび輸
出割当てに関する行政権限が、第一次産業・エネルギー省に移管されることとな
った。

(2)再編後の中核組織を抽象的に規定

 同法は、さらに、民営化後の豪州食肉業界の中核を担うべき販売促進組織 (Ma
rketing Body)、調査研究組織 (Research Body)、ならびに事業資金供給認定組織
 (Approved Donors)を指定する旨を定めた。

 このうち、事業資金供給認定組織とは、それぞれの会員から徴収した課徴金や
拠出金を MLAの事業に対して提供する窓口となる資格を有する組織を意味してい
る。

 ただし、同法は、これらの各組織について、それらに該当するための諸条件と、
販売促進、調査研究の両組織の財源を規定するにとどまり、これらの組織そのも
のについて具体的に規定することはしなかった。

 さらに、同法は、業界の中から特定産業団体(Prescribed Industry Body)を
指定する旨を規定し、政府は当該団体が協議の上で策定する産業政策を考慮しな
ければならないとしたが、この特定産業団体についても具体的には一切規定しな
かった。

 これは、従前の関連法規が、旧AMLCを含む各公的機関の組織およびその業務の
すべてについて、直接かつ具体的に規定していたのとは大きく異なる点に留意す
る必要がある。


5 政府・業界の「合意書」

(1)政府・業界が再編の具体案に合意

 その後、政府(第一次産業・エネルギー省)および業界各セクターの間では、
法律の制定を受けて、具体的な組織体制を固めるための議論が1年余りにわたっ
て続けられ、本年4月に至り、ようやく、これらの代表者による「合意書(Memor
andum of Understanding:MOU)」としてまとめ上げられた。

 当該合意書は、食肉産業戦略計画(MISP)に沿った現行の産業政策を継続実施
することを再確認するとともに、法律で規定された各組織の指定とその具体的な
役割、これらの相互関係、各組織の活動資金の財源、過去に蓄積した業界資産の
管理などについて、詳細に規定する内容となっており、法律そのものではないも
のの、第一次産業大臣などが署名しているため、拘束力を有するものとなってい
る。

(2)ピークカウンシルの指定

 合意書では、まず、既存の業界団体である豪州肉牛生産者協議会(CCA)、豪州
羊生産者協議会(SCA)、豪州フィードロット協会(ALFA)、パッカー団体(NMA
およびAMC)並びに豪州家畜輸出協議会(ALEC)の 6 団体が、各セクターを代表
するピークカウンシル(Peak Industry Council)として指定された。

 ちなみに、ピークカウンシルという名称は、当該合意書において初めて使用さ
れたものであり、これらの団体は、それぞれの担当セクターの利益代表するとと
もに、戦略的な計画の下に関連政策を策定し、かつ、事業資金計画について協議
・決定する重要な組織として位置付けられている。

  指定された各ピークカウンシルは、政府・第一次産業・エネルギー大臣に対し、
担当セクターに関連する政策を提言するとともに、大臣からの諮問に応えること
も要求されている。

 また、各ピークカウンシルは、それぞれの担当セクターのみならず、他のセク
ターの代表とも連携し、MISPに基づく業界全体の戦略計画の策定に関わるという、
極めて重要な役割も与えられた。

 さらに、各ピークカウンシルは、MLAによって実施される各セクターの関連事業
を監視し、定められた目標に合致しているか否かを評価するとされている。

 以上のことからも分かるように、今回の合意書によってピークカウンシルとし
て指定された各組織は、業界内で極めて重要な役割を与えられたと言える。

 なお、各ピークカウンシルの活動資金は、これまではそれぞれのセクターごと
の課徴金が充当されていたが、今後は、合意書に基づき、年額の上限が定められ
た上で、すべて既存の食肉業界資産からの配分で賄われることになった。


(3)特定産業団体の指定

 また、当該合意書では、これらのピークカウンシルに、山羊生産者協会(GICA)お
よび食肉業界の御目付け役ともいうべきRMAC(後述)を加えた8団体が、法律に
基づく特定産業団体として指定された。

 先に述べたように、政府は、特定産業団体が協議の上で策定する産業政策につ
いては、これを考慮しなければならないとされていることから、これら8つの特
定産業団体は、政府が定める産業政策全般について、正式に影響力を行使できる
こととなったと言えよう。


6 ミート&ライブストック・オーストラリア(MLA)

(1)法律に基づく指定

 合意書は、MLAに言及し、法律で規定されている販売促進組織 (Marketing Bo
dy)および調査研究組織(Research Body)の、双方に該当する組織として指定し
た。

 MLAは、実質的に、再編後の豪州食肉業界の中核を担う事業実施機関として位置
付けられたことになる。

 ただし、MLAは、その基本的な性格において、旧AMLCなどのように、法律そのも
ので規定された公的機関とは明確に異なり、法律で規定された枠組みに該当する
組織として、合意書に指定されたものであるという点に留意する必要があろう。


(2)組織の性格

 MLAは、家畜取引課徴金を支払うすべての牛および羊の生産者、並びにフィード
ロット経営者などをその会員としており、基本的には牛および羊の生産者を母体
とする組織である。

 また、MLAは、それらの各セクターの会員を束ねる中間組織である豪州肉牛生産
者協議会(CCA)、豪州羊生産者協議会(SCA)および豪州フィードロット協会(AL
FA)を特別会員として登録している。

 なお、MLAの役員構成をみると、家畜生産者の代表およびその上部団体の長を主
体としており、政府関係者は一人も含まれていない。このことからも、基本的に
は純然たる民間組織であることがわかる。

 ちなみに、MLAは、その発足後、18ヶ月以内に第 1 回の年次総会を開催しなけ
ればならないとされている。

 総会においては、MLAのすべての一般会員は、事業計画の策定などの議決事項に
関し、課徴金支払額に応じた投票権限(投票数)を有するものとされている。

 また、MLAは、年次総会を開催するに先立ち、CCA、SCA、ALFAおよびGICAと協議
の上で、翌年度以降の3年度間にわたる各セクターの事業実施計画を策定しなけ
ればならないとされている。


(3)事業の範囲

 MLAは、食肉産業戦略計画(MISP)に基づき、関係諸団体と協力して、主として
牛および羊の主に生産者からの課徴金をもとに生産者のための事業を実施するこ
ととされている。

 具体的には、食肉の販売促進、調査研究、家畜衛生および動物愛護、安全性お
よび遺伝子関係、業界の危機管理、食肉の基準、情報収集などがその範囲に含ま
れている。

 従って、MLAは、旧AMLCが実施してきた食肉の販売促進および品質規格に関する
事業や、旧MRCが実施してきた調査研究に関する事業の大部分を引き継ぐこととな
った。

 さらに、MLAは、業界全体の利益に資する内容の調査研究事業に限り、政府およ
び民間からの委託を受けてこれを実施することもできることとなった。

 ただし、旧AMLCの内部にあったオズミート(AUS−MEAT)は、MLAとパッカーの
団体であるAMPC(後述)の共同出資による組織として独立した。


(4)他のセクターの事業も実施

 MLAは、基本的には牛および羊の生産者を基盤とする組織であるが、子会社とな
るオズミートを除けば、再編後の食肉業界の中において実際に事業を実施する唯
一の組織となることから、パッカーおよび生体輸出の両セクターに関する事業に
ついても、それらの団体と協議の上で実施することとされている。

 この場合、単独のセクターの資金のみを財源とする事業を「コア・ファンクシ
ョン」、複数のセクターの資金を共同財源とする事業を「ジョイント・ファンク
ション」と呼んで区別し、それぞれのセクターごとの事業区分を明確にすること
とされている。

(5)畜種ごとの事業区分

 なお、今回の再編に先立ち、家畜生産者の間では、牛と羊の畜種別団体をそれ
ぞれ別個に設立することを求める意見が大勢を占めていた。

 結局、この多数意見は政府に受け入れられず、畜種別団体はMLAに一本化される
こととなったが、各セクターの分離独立を求める意見は、依然として根強く残さ
れている。

 このため、MLAは、肉牛(牧草肥育)、羊、フィードロットの各セクターを代表
するピークカウンシルの監視下で、それぞれのセクターに関する事業を明確に区
分管理することが求められている。


(6)家畜取引課徴金が基本財源

 MLAの活動資金の大半は、基本的に牛および羊の取引きが行われるごとに支払わ
れる家畜取引課徴金で賄われることとなった。

 当該課徴金は、生産者または取引業者に支払われる販売代金の中から、一旦、
第一次産業・エネルギー省の内部に置かれる課徴金管理部門に一括して集積され、
そこから直接MLAに支払われることになっている。したがって、従来と異なり、
これらの課徴金はCCAやSCAなどを経由することはなくなった。

 課徴金の単価は、畜種ごとに課徴金法(Levy Acts)で定められているが、CCA、
SCA、ALFAおよびGICAは、MLAがその年次総会で取りまとめ、第一次産業・エネル
ギー大臣に対し、各々の対象家畜の課徴金単価について提言することとなった。

 このことは、家畜取引課徴金の単価の決定に際して、生産者自身が関与できる
範囲が大幅に広げられたことを意味している。

 なお、牛の取引課徴金は従来から徴収されていたが、羊の取引課徴金は従来の
と畜課徴金に代わるものとして新たに導入された。また、牛の取引課徴金は、従
前、一括して管理されていたが、今後は、穀物肥育牛に係る部分は区分して徴収
されることとなった。

 このため、新課徴金制度の導入に際しては、羊の取引業者が課徴金支払いの事
務手続きに慣れていないこと(従来はパッカーが羊のと畜課徴金を支払っていた)、
成羊と子羊の区分が難しいこと、さらには、穀物肥育牛と一般の牧草肥育牛との
区分が難しいことなど、解決すべき課題が多いと言われている。


(7)パッカーおよび生体輸出業者からの資金の受入れ

 MLAは、課徴金収入とは別に、毎年度、パッカーおよび生体輸出業者から、その
それぞれの上部団体を通じて、事業資金の提供を受けることとなった。

 パッカーおよび生体輸出業者は、先の法律改正により、と畜および家畜取引課
徴金の支払義務が免除されたものの、合意書において、毎年度、MLAに拠出する金
額を決定することが定められた。

 なお、両セクターの団体が、それらの会員から拠出金を徴収する具体的な方法
等については特に規定されていない。

 ただし、合意書の付属書において、政府は、それらの拠出金額が業界全体とし
て産業政策を推進するに充分でないと判断された場合、パッカーおよび生体輸出
業者の課徴金の支払義務を復活できる旨が明記されているため、実質的には強制
的な資金拠出が定められたに等しいことになる。

 一方、パッカーおよび生体輸出業界ともに、法律に基づく強制的なと畜・取引
課徴金を支払っていた前年度までと比較すると、その業界全体としての拠出総額
は大幅に減少し、初年度に当たる98/99年度における拠出金額は、それぞれ、パ
ッカー業界が12.929百万ドル(約10億円)、生体輸出業界が883千ドル(約 8 千
万円)とすることで合意された。


(8)政府および民間からの資金の受入れ

 MLAは、さらに、政府および民間からも資金提供を受けられることとなった。

 ただし、これらの資金提供の対象となる事業は、調査研究事業に限定され、か
つ、業界全体の利益に資する内容のものとされている。さらに、政府からの資金
提供については、民間からの提供額と同額が限度と定められている。

 課徴金、政府・民間資金を含めたMLA活動資金は、初年度の見積もりで約84百万
ドル(オズミートへの出資も含む)とされており、旧AMLCおよび旧MRCを併せた額
(約120百万ドル)よりも大幅に縮小することとなる。


7 AMPCおよびライブコープ

(1)AMPCおよびライブコープの指定

 次に、合意書は、食肉パッカーの団体であるAMPC (Australian Meat Processo
rs Corporation)、生体輸出業者の団体であるライブコープ(Australia Livesto
ck Export Corporation Limited)を、ともに法律で規定されている資金供給認定
組織に該当する組織として指定した。


(2)AMPC

 このうち、AMPCは、NMA(National Meat Association of Australia)とAMC
(Australian Meat Council Limited)の両団体をまとめる組織として、新たに設
置されたものである。

 ちなみに、NMAとAMCは、双方ともパッカーを主な会員として構成されているが、
どちらかというとNMAには中小規模のパッカー会員が多く、少量の特殊需要に対応
した製品の製造者や、食肉小売業者の会員も含んでいるのに対し、AMCは主に大規
模パッカーおよび非パッカーの輸出業者の会員から構成されている。

 AMPCは、事業資金供給認定組織として指定されたことにより、MLAに対し、パッ
カー関連事業の資金を提供する窓口とされた。

 また、AMPCは、毎年度、NMAおよびAMCと協議して、パッカー業界からMLAに拠出
する資金の額を決定するとともに、その後の3年間にわたるパッカー関連事業の
事業計画を策定することとされた。

 従って、AMPCは、NMAとAMCが、それぞれピークカウンシルとして、直接にパッ
カーの利益を代弁する活動を行うのに対し、むしろ、自らのセクターの資金管理
を中心に、セクター内外との調整を行う組織として位置付けられたと言えよう。

 なお、AMPCを中心とするパッカー業界は、各セクターの縦割り構造が強化され
た中で、食肉業界への拠出金額を従来よりも大幅に減少させることから、今後は、
他のセクターとは一定の距離を置く立場になると思われる。


(3)ライブコープ

 ライブコープは、生体輸出業者を会員とするALEC(Australian Livestock Exp
orters’Council Limited)の上部団体として新たに設置された。

 また、ライブコープは、事業資金供給認定組織として指定されたことからMLAに
対し、生体輸出関連事業の資金を提供する窓口とされた。

 さらに、ライブコープは、毎年度、ALECと協議して、生体輸出業界からMLAに拠
出する資金の額を決定するとともに、その後の3年間にわたる生体輸出関連事業
の事業計画を策定することとされた。

 従って、ライブコープは、ALECがピークカウンシルとして、直接に生体輸出業
者の利益を代弁する活動を行うのに対し、AMPCと同様に、自らのセクターの資金
管理を中心に、セクター内外の調整組織として位置付けられたと言えよう。

 なお、生体輸出業界も、パッカー業界と同様の理由により、今後は、食肉業界
内の他のセクターとは一定の距離を置くことになると思われる。


8 RMAC

 RMAC(Red Meat Advisory Council)は、 6 つのピークカウンシルを会員とす
る組織として新たに設立された(その役員には、当面の間、各ピークカウンシル
の会長が就任することとされている)。

 また、RMACは、各ピークカウンシルとともに、法律に基づく特定産業団体のひ
とつとして指定され、政府が定める産業政策全般について、正式に影響力を行使
できる組織ともなった。

 RMACの主な業務は、食肉業界全体の御目付け役として、MISPの進捗状況を監視
するとともに、政策全般に係る事項について、第一次産業・エネルギー大臣に諮
問することとされている(ちなみに、この中には、業界組織の民営化に伴って政
府に移管された輸出許認可に関する事項も含まれている)。

 RMACのもう一つの重要な役割は、過去に蓄積された豪州食肉業界資産の配分と
管理である。今回の再編に伴い、各ピークカウンシルの活動資金はすべて業界資
産で賄われることになったため、この業務は非常に重要なものとなった。また、
RMACの活動資金自身も、この業界資産によって賄われることとなっている。

 以上のことから、RMACは、旧MICに類似した豪州食肉業界全体の御目付け役的な
組織として位置付けられた。

 しかし、会員である各ピークカウンシルの影響力が強化され、同時に、各セク
ターがそれぞれ独立志向を強めていることから、業界資産の配分を含めて業界全
体の意見を取りまとめることは容易でないと見られており、今後のRMACの活動が
注目されている。


9 おわりに

 豪州食肉業界の一時代を画するような大幅な業界再編が、ようやくスタートし
た。

 以上、見てきたように、今回の再編の特徴は、業界自身が関連政策に直接関与
できる範囲を広げたことと、食肉業界内の各セクターがそれぞれの独立志向を強
め、縦割りの業界構造を強化させたことにある。

 これは、目標が不明確であると従来の食肉産業政策に業を煮やした各セクター
が、それぞれの単独事業を効果的に実施するための全体的な枠組みを創り出した
と見ることもできよう。

 ただし、他方では、豪州食肉業界全体としての戦略的な事業を実施するに当た
っては、従来よりも高い敷居を超えなければならなくなったことも、反面の事実
ではないかと思われる。

 豪州食肉業界にとって極めて重要な輸出先であるアジア諸国が、深刻な経済危
機に置かれている中にあって、今回の業界再編がどのような長期的な影響と効果
をもたらすものとなるか、注目していきたいと思う。


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