今後の共通農業政策の改革では環境対策にテコ入れ(EU)


フィシュラー農業委員、CAP改革における環境対策の効果を強調

 6月末に開催された環境関連の会議で、EUのフィシュラー農業委員は、共通農
業政策(CAP)改革案に織り込まれた環境対策について講演した。その中で、同委
員は、既存の「農業と自然環境保護措置」や「条件不利地域対策」に、環境関連
の対策を多く取り入れるなど、大幅なテコ入れを図っていると述べた。

 講演では、まず、従来の CAPは、農業生産面で、質より量の拡大を刺激し、農
薬や肥料の過剰使用をもたらしたが、その環境面への影響は無視されてきたとし、
環境対策は不十分であったと述べている。しかし、その後、92年のCAP改革で環境
対策を広く取り入れた結果、農薬で15%、窒素肥料で25%、リン酸肥料で3分の 
1の使用量削減が見られたとし、その対策の効果を強調している。


環境対策に係る主要な提案を説明

 次いで、同委員は、CAP改革案に織り込まれた環境対策に係る主要な提案を次の
ように述べている。

1 農業と自然環境保護措置

 この措置に基づく補助の対象を、既存の環境関連規則や優良農業基準の遵守で
はなく、他の補助事業にはない環境面への貢献を実現する活動に限定した。対象
範囲を厳格にすることで、農業の環境への貢献が量的に格段の進歩を遂げること
になる。また、予算面の充実も図っている。

2 条件不利地域対策

 この対策は、農村の過疎化防止を目的とする所得対策として出発した。今回の
改革案では、持続可能な農業活動や自然保護との関連を強化し、環境対策として
の意味合いを強くした。また、持続可能な農業活動は、環境保全の前提条件であ
ることから、この対策を社会経済的に捉えることが重要である。さらに、ヨーロ
ッパモデルの農業の振興に当たり、この新しい条件不利地域対策は、さまざまな
補助の仕組みが与える影響を評価するためのパイロットプロジェクトと考えてい
る。

 具体的には、いわゆる条件不利地域の指定条件に、「特別な環境面での制約」を
加えたことを挙げ、生産者がより効率的に土地の管理に参加できるようにした。

3 その他の政策

 上記以外にも、自然環境保護への投資に対する助成、景観や自然保護に有効な
農法についての研修を優先させるなどの提案を行っている。

4 各種の政策に共通に適用する条件

 CAPの下での補助金の交付に当たり、環境関連の条件を付すこととしている。た
だし、加盟国ごとに環境条件が異なるため、条件や実施状況の確認手段など、実
際の運用は加盟国に委任することとしている。

5 市場関連措置

 生産者への直接支払いの一部を、各国の裁量で行うこととしたが、その支払い
に当たり、環境関連の条件を付すことができるようにした。また、粗放化奨励金
については、交付条件を厳しくする一方、奨励金単価を増額したことで、運営が
より効果的になる。


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