規制緩和で飲用向け乳価は引き下げ(豪州)


飲用乳の価格や流通に関する行政規制が一部緩和

 豪州、ニューサウスウェールズ(NSW)州では、飲用乳に関する行政規制のうち、
@加工から小売りまでの各流通段階のマージンや販売価格、A加工、流通および
販売業者の登録と製品の流通販売区域の指定に関して、この 7 月 1 日より自由
化された。これまでは、小売店での牛乳販売は定められた上限価格の範囲内に統
制され、特定区域内の小売店で売られる牛乳は指定乳業メーカーのブランドに限
られていたが、今回の規制緩和により、小売店は価格や仕入先を自由に決定でき
るようになった。


量販店の圧力で生産者乳価も引き下げ

 これを契機に、一部の大手量販店では、7月1日以降の牛乳仕入れについて、一
般的にNSW州よりも生乳生産コストが低いとされるビクトリア(VIC)州の乳業メ
ーカーをも対象に入札を実施したとされる。この結果、酪農家や乳業メーカーな
どの業界代表者から構成されるNSW州の飲用乳価諮問機関は、VIC州との対抗上、
引き下げやむなしとの判断を下し、これを受けたNSW酪農庁は飲用向け生産者乳価
について、従来のリットル当たり53.35豪セント(約47.5円:1豪ドル=89円)か
ら50.04豪セント(約44.5円)へと約 3 豪セントの引き下げを行った。

 生産者乳価の他にも、量販店までの各マージンが圧縮され、量販店の仕入れ段
階では、リットル当たり約5〜6豪セントの引き下げになったとされている。NS
W酪農庁によると、今回の価格引き下げによって、VIC州との牛乳の価格差は、VI
C州からNSW州までの輸送費にほぼ匹敵する水準にまで縮小したとしている。

 豪州の飲用乳に関しては、各州政府により規制されており、飲用向け生産者乳
価の行政決定などは現在も全州で実施されているが、今回自由化されたNSW州と同
様の流通規制は、既に今年12月31日までの廃止を決定しているクインズランド州
に残るのみとなった。

 NSW州の飲用向け生産者乳価の行政決定についてはその生産枠とともに、2003年
までに温存されることが今年5月に決定され、酪農家は一様に胸をなで下ろして
いただけに、突然の価格引き下げに反発は強い。NSW州の供給業者は既に 50社ま
で寡占化されていることもあり、規制緩和による価格への影響は少ないとみられ
ていたが、量販店の圧力は予想外に強かったようだ。


現在のところ消費者への利益還元はなし

 今回の引き下げにより、飲用向け生産者への支払いは全体で年間1千5百万豪
ドル(約13億円)減少し、酪農家一戸当たりでは約8千豪ドル(約71万円)の減
収の一方で、小売価格据置きの場合、小売部門全体に6千万豪ドル(約53億円)の
利益をもたらすとの試算もあり、規制緩和本来の目的である消費者への利益が確
保されていないとの批判も強く、今後議論を呼びそうだ。


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