秋収穫食糧の生産増に大きな期待(中国)


夏収穫食糧は前年比11%の減産

 中国農業部はこのほど、98年の夏収穫食糧(穀物、いも類、豆類)の生産状況
をとりまとめた。これによると、98年の夏収穫食糧の生産量は前年を1,460万トン
下回る(11%減) 1 億1,310万トンとなった。農業部は、昨年と比較して減産と
なったものの、これは夏季収量としては昨年に次ぐ史上2位の成績となっており、
ほぼ満足のいくものと評価している。

 なお、夏収穫食糧は小麦や早稲が中心となっており、通年の食糧生産の約4分
の1を占めている。


播種面積の減少、自然災害の多発が前年割れの主因

 農業部は今年の夏収穫が昨年実績を下回った要因として、近年の3年連続の豊
作による食糧価格の下落によって、他の商品作物に転作する農家が出始め、小麦
と早稲の播種面積が前年と比べてそれぞれ5.0%、4.4%減少したこと、全国で洪
水、暴風雨、雹(ひょう)、地震などの深刻な自然災害が多発し、2,841万ヘクタ
ールの穀物栽培地域が被害を受けたことなどを挙げている。特に、揚子江の中・
下流を中心とした地域の洪水の被害は甚大で、湖北、湖南、および江西の 3 省
で273万ヘクタールの被害が報告されている。

 なお、国家統計局の試算によると、夏収穫食糧の収量低下などによる農業生産
の不振が、今年上半期のGDP成長率を0.4%押し下げたとしている。中国は、今年
のマクロ経済の目標としてGDP成長率 8 %を掲げているが、農・工業における自
然災害の影響に加えて、アジア通貨危機で輸出が伸び悩んでいることなどから、
一部では目標達成は困難との見方も出ている。


秋作の生産を強化、夏作の減産を補う

 また、中国は、今年の食糧生産目標を昨年並みの 4 億9,250万トンとしている
ことから、夏食糧の減収分を秋食糧の増産で補うことを念頭に、秋食糧の生産を
強化すべく準備を進めている。

 具体的な方策としては、秋食糧の作付面積を33万ヘクタール増加させたほか、
水害などの被災地に18万2千トンの肥料、3万6千トンの農耕用燃料および90千
2百トンの種子を配布、また、専門グループを組織して現地へ派遣し、技術的な
問題の解決に当たらせるとしている。さらに、被災地の農家に賦課されている公
共料金などの料率を下げるなどして農家の負担の低減を図るとしている。


トウモロコシ、秋収穫に向けて上々のスタート

 食糧全体の7割を生産する秋収穫食糧で注目すべきは、飼料穀物の大部分を占
めるトウモロコシの作柄動向であろう。昨年、トウモロコシの主産地である東北
地域では干ばつの影響により減収となったが、今年は春以降の適度な降雨によっ
て今のところ作柄は良好と伝えられる。また、黄河流域や南部地域においても夏
食糧収穫以降に播種されたトウモロコシ、稲の生育は順調と言われ、通年で昨年
並みの食糧生産水準量を確保できるとの見方が大勢を占めているようである。

 しかしながら、関係者は、秋収穫に向けて良いスタートができたものの、揚子
江流域の洪水被害は依然として深刻であり、今後の自然災害の予測は困難なだけ
に、管理体制と防災を強化していくことが必要と指摘している。


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