供給減で豚肉価格が回復(タイ)


豚価上昇の原因は生産縮小

 97年 9 月から通貨下落の影響により、それまで40バーツ(140円:1バーツ=
3.5円)を超えていた生体豚 1 kg当たりの全国平均農家販売価格は、98年1月に
は29バーツ(102円)の最低価格を記録し、ブロイラーの農家販売価格をも下回っ
た。また、97年8月以前はチャロン・ポカパン(CP:タイの華僑系財閥企業)が
販売する子豚価格およびバンコク市場における豚枝肉1kg当たりの卸売価格は1,
000バーツ(3,500円)および51バーツ(179円)を超えていたものの、98年1月に
は250バーツ(875円)および36バーツ(126円)にまでそれぞれ急落した。しかし、 
6月の価格は、同農家販売価格が38バーツ(133円)、同子豚価格が900バーツ(3,
150円)、同卸売価格が51バーツ(179円)に回復し、通貨下落以前の価格水準に
戻ってきている。

 この価格の上昇は、需要の増大によるものではなく、通貨危機の影響を受けた
養豚農家の規模拡大意欲の減退や廃業などに起因する豚の生産縮小によるものと
みられる。

コスト高で養豚経営は悪化

 最近では飼料価格は安定してきたものの、1kg当たりの平均豚肉生産コストは、
96年の約33バーツ(116円)から約37バーツ(130円)へと12%も上昇しているた
め、多くの養豚農家では、資金繰りの悪化などにより苦しい経営状況が続いてい
る。そのため、将来の高値を期待した規模拡大を行うどころか、逆に生産規模の
縮小などを余儀なくされ、生活を維持するために、やむなく養豚経営を継続して
いる状況となっている。

 タイ養豚生産者協会は、豚の生産頭数が99年まで減少すると見ていることから、
豚の価格は緩やかに上昇すると予測し、これからの養豚経営は満足できるものに
なるとしている。さらに、経済の回復が速まり、豚肉消費が増加するようなこと
になれば、豚価は上昇し養豚農家にとって最良の年になると見込んでいる。


食肉流通業者は政府介入などによる価格抑制に期待

 一方、食肉流通業者などは、現在の深刻な経済危機はすぐに回復するとはみて
おらず、豚価は上昇するどころかむしろ現在の価格より下落すると予測し、減退
した消費者の豚肉需要を回復することが先決として、豚肉の廉価販売に努めてい
る。また、仮に豚価が上昇した場合でも、政府が価格介入などにより卸売価格と
小売価格の値上げを制限するとともに、豚肉の輸入により供給量を増加させ、そ
れらの値上げを抑えることが必要であるとしている。


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