新政権に輸入牛に対する補助を要請(フィリピン)


目覚ましい経済発展を背景に消費が増大

 先般誕生したフィリピンのエストラーダ新政権に対し、同国の畜産物生産者団
体は、困窮する肥育農家や酪農家救済のため、肥育素牛や乳牛などの輸入に対す
る新たな補助を要請した。

 同国では、近年の目覚ましい経済成長を背景に畜産物の消費量が増加しており、
牛肉の 1人当たり消費量は95年が3.42kg(前年比4.9%増)、96年が3.69kg(同
7.9%増)と増加してきた。また、牛乳についても95年の1人当たり消費量は21.1
kg(同2.7%増)と増加している。

 国内生産量は、生乳が95年で1万2千トンと前年比5%減となったものの、牛
肉では95年の19万 8 千トンから96年には20万9千トン(同5.6%増)と増加して
いる。しかし、消費の急速な増大に、国内の肥育素牛や乳牛の供給が追いつかな
いため、豪州などから素牛を多く輸入しており、その輸入頭数も、肥育素牛が95
年には18万 8 千頭、96年には16万 7 千頭と、91年の 1 万 2 千頭と比べ十数倍
となっている


新大統領の農業関連対策の手腕に期待

 しかし、同国の畜産農家は牛の飼養規模が 4 〜 5 頭/戸程度で貧しい小規模
農家が多く、また、昨年の通貨ペソの下落により、素牛の輸入価格が急騰したこ
と、トウモロコシなど輸入飼料の価格上昇により生産コストが上昇したことなど
から、一部の農家では牛の輸入を中止したり、肥育や酪農そのものを止めてしま
うなど、経営に困難を来す農家が現れる状況となっていた。

 生産者団体では今回の要請に際し、現在の同国の畜産業には、国産の牛肉や牛
乳の消費奨励とこれらの生産者の保護が必要であり、このことは新大統領の食料
生産の強化を図ろうとする政策と一致するとのコメントを出し、補助金の獲得に
強気の姿勢を見せている。しかし、新大統領の政策の中には「ポークバレル予算」
と呼ばれる、議員発議による公共事業などへの国庫補助金の支出を廃止する公約
があり、新政権では安易な補助金の支出は行わないとしている。

 それでも、同国の畜産農家は、貧困者対策と農業関連対策に重点を置くとして
注目されているエストラーダ新大統領の手腕に期待している。


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