高まる牛肉などへ国内産・輸入物の表示義務付けに関する論議(米国)


米議会上院、予算案に国内産・輸入物表示義務付けに関する修正案を盛り込む

 米国内で牛肉・羊肉への原産国表示に関する論議が高まっており、99年度農業
予算に関する上院予算案に、牛肉・羊肉について原産国表示を行わせるという修
正案が盛り込まれることとなった。この修正案は、農務長官に対し、予算案成立
後、1年以内に原産国表示に係る費用および消費者の反応について議会に報告す
るとともに、18ヵ月以内に規則を制定するよう求めている。原産国表示が実施さ
れた場合、牛肉・羊肉には米国産または輸入物の表示が行われることとなり、カ
ナダなどから輸入されると場直行牛から生産された牛肉については、輸入牛肉と
いう表示が義務付けられることになる。


賛否が大きく分かれる国内産・輸入物の表示義務付け

 全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)は、今回の上院予算案について、生体で輸
入され米国内で直ちにと畜処理されたものが米国産牛肉として流通していること
に疑問を持つ生産者の不満を解消するものであるとして歓迎している。また、原
産国表示は、米国産牛肉が輸入牛肉と差別化されるため、競争力が増し、生産者
に利益をもたらすとしている。

 しかしながら、一部の生産者などからは、大半の輸入牛肉が、加工用やひき肉
として利用されている実態にかんがみ、原産国表示が米国産牛肉の付加価値を高
めることになるかどうかと、その効果を疑問視する声も出ている。また、パッカ
ーを会員とする米国食肉協会(AMI)は、原産国表示については、コスト増などを
理由に反対の姿勢を示している。

 加えて、原産国表示が、貿易障壁となるとの懸念も一部に出ている。カナダの
バンクリフ農業大臣は、原産国表示は、北米自由貿易協定(NAFTA)における北米
単一市場の趣旨に反して貿易障壁を構築することにほかならず、両国の生産者、
パッカーおよび消費者の利益に反するものであるとして、いち早く反対の立場を
表明するとともに、グリックマン農務長官に対し、同様の態度を示すよう求めて
いる。


結論は 9 月以降に持ち越し

 食肉の原産国表示については、米農務省(USDA)の農業マーケティング局(AM
S)が本年4月に公聴会を開催したが、AMSは、原産国表示をあくまで自主的なも
のとして提案していた。この際、原産国表示には、家畜の各流通段階での個体ま
たは群ごとの管理が必要なことから、経費面などさまざまな問題点が指摘されて
いる。

 米国の99年度農業予算案は、 6 月下旬に下院予算案が、 7 月下旬に上院予算
案が、それぞれ議会を通過したため、今後、上下両院協議会において調整が図ら
れることとなっている。結論は、議会が再開される 9 月 8 日以降に持ち越され
るが、今回の牛肉・羊肉の原産国表示問題は、他の食品にも影響を及ぼしかねな
いことから、今後ともさまざまな議論が行われるものとみられている。


元のページに戻る