乳調製品の輸入急増問題に関する報告書を公表(カナダ)


乳調製品の輸入が急増

 カナダは、世界貿易機関(WTO)協定に基づき、牛乳・乳製品およびその調製品
に対して高率の2次関税を伴う関税割当制度を適用し、実質的に輸入禁止的な措
置を講じたものの、乳製品の含有率が50%未満の調製品は、関税割当制度の対象
としなかった。この結果、規定のすき間を利用して、主に砂糖51%、バターオイ
ル49%を含む乳調製品の輸入が急増した。この乳調製品は、カナダ産のバターや
生クリームの代替品として、主に低価格帯のアイスクリームやプロセスチーズの
原料に利用されている。


カナダ政府、同問題の検討をCITTに要請

 カナダ酪農生産者連盟は、この乳調製品の輸入急増がカナダ酪農に大きな損失
をもたらしているとして、連邦政府に対し、この乳調製品の輸入が実質的に停止
されるよう、これを関税割当制度の対象となる関税番号に再分類することを要請
した。連邦政府は、これを受けて、カナダ国際貿易裁定委員会(CITT)に対し、
WTO協定によってカバーされていない乳調製品の輸入急増問題に関して、その解決
策などを調査・検討するよう要請していた。(詳細は、本紙98年5月号トピック
ス「乳調製品の輸入急増に悩むカナダ酪農」を参照)


関税割当対象への再分類は否定

 こうした中、CITTは、 7 月 3 日、関税割当の対象となっていない乳調製品の
輸入急増問題に関する報告書を公表した。報告書の作成に当たり、CITTでは、90
の企業から質問状に対する回答を得るとともに、1週間にわたる公聴会で、民間
部門から23人、政府部門から12人の計35人から証言を聞いたとしている。報告書
では、本問題を解決するための対策について、いくつかの選択肢を示したものの、
生産者団体の主張する関税割当対象への再分類は否定した。なお、報告書の概要
は以下のとおりである。

(乳調製品輸入の実態とその影響)

 カナダに輸入されているバターオイル調製品は、@バターオイルと砂糖の混合
品、Aバターオイルとグルコースの混合品、Bバターオイルと乳化剤など加工用
添加物との混合品に分類される。

 アイスクリームメーカーは、このような製品の輸入を80年代後半から開始して
いるが、これが94〜69年に急速に増加し、97年には、前年に比べほぼ2倍に増加
した。これは、97年におけるアイスクリームの乳脂肪使用量およびプロセスチー
ズの交換可能な乳脂肪量の合計量の12%に相当する(最大25%まで置き換えが可
能と推定)。また、このことによる損失額は、1,280〜3,090万カナダドル(約12
〜30億円: 01 カナダドル=96.3円)と推定される。

(本問題解決のために取り得る選択肢)

@酪農家によるバターオイル混合品の再分類に関するCITTへの上訴
ACITTによるセーフガードに関する調査の実施
Bアイスクリームおよびプロセスチーズ向け乳脂肪に対する特別乳価の設定
Cバターオイル混合品向け乳脂肪に対する特別乳価の設定
D酪農家に対する所得の損失補償
Eバターオイル混合品に対する関税細目の設定および特別の関税取り扱い


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