豪州の牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○最近の牛肉輸出をめぐる動向


生体牛輸出の回復基調で肉牛調達が困難に

 99年における豪州の牛肉生産量は、と畜頭数が減少傾向であるにもかかわらず、
適度な降雨に恵まれ草地の生育が良好なことなどを背景に、枝肉重量が増加して
いることから、過去最高で推移している。また、生体牛輸出も、昨年の大幅な落
ち込みと比べ、中東など新興市場の発展により比較的順調に回復基調で推移して
いる。

 肉牛の生体価格は、日本向け牛肉輸出価格の上昇に加え、ここしばらく続いて
いる降雨の影響を受け、生産者の間で出荷を控える動きがでており、肉牛供給量
が減少しつつあることから、今月に入っても上昇傾向で推移している。これを受
けて枝肉価格もここ5年間で最高の値を付けている。

 生体牛輸出の中心となる北部地域では、牛肉輸出との兼ね合いから、供給がひ
っ迫状態になりつつあり、来年に向けて10%以上の値上がりが見込まれている。

 生体牛輸出業者の一部では、新興市場である中東や経済回復が進む東南アジア
諸国からの注文に対応できない事態が出始めており、一部では、市場価格より5
%以上の高値での取引が行われている。

 このため、生体牛の調達は、ノーザンテリトリー(北部準州)やウエスタンオ
ーストラリア州の一部肉牛生産地域で、需要が供給能力を上回り肉牛調達が難し
い状況となっていることから、ニューサウスウェールズ州にまで供給源を拡大し
つつあり、肉牛をめぐり生体牛輸出業者とパッカーとの間で競合が出始めている。


輸出向けを優先しつつある牛肉生産

 豪州政府の統計によると、99年9月の月間と畜頭数は6万5千頭(速報値)を
下回り、前年同月と比較して9.5%減となった。中でも雌牛と畜の減少が目立ち、
前年同月比で19%減となっている。州別ではビクトリア州の33%減を最高に、各
州でいずれも平均して10%以上の減となっている。雌牛と畜減少の背景として、
豪州国内の気象条件が昨年の乾燥した気候から一転して今年は降雨に恵まれたこ
とから、緩やかながら牛群の再構築が始まったためである。

 一方、去勢牛のと畜頭数は、雌牛と畜が減少する中で上昇し、前年同月比8.5
%増となった。増加の主な要因は、国内向け去勢牛と畜が10%程度減少したにも
かかわらず、輸出向けと畜が20%以上増加したことにある。好調な輸出価格に支
えられ、輸出向けを優先する動きが表れている。このため供給量の減少が予想さ
れる国内の牛肉市場は、クリスマスシーズンの需要を控え品薄感が強まっており、
価格上昇に伴う需要の低下が懸念されつつある。


高級部位の米国向けチルド輸出が増加

 最近の牛肉輸出の変化を見ると、米国向けの輸出品目にわずかながらではある
が、変化が生じてきている。

 従来から米国向け牛肉の輸出は、カウミートなど加工向け製品が大宗を占める
ているが、昨年来、ロイン系を中心としたチルドによる輸出拡大の動きが目立っ
ている。米国では、好調な経済に支えられ、依然として牛肉需要が高まっており、
高級部位を中心に品薄感が漂っている。

 実際の輸出状況は、昨年の年末需要を契機にその後も全体的に増加傾向で推移
しており、豪州政府の貿易統計によると、99年9月の輸出量は1千8百トンを記録
し、チルド輸出では過去最高となった。このような状況から、豪州が輸出するロ
イン系チルド全体に占める米国向けのシェアは、約1割を占めるに至っている。

 しかしながら、依然として米国向けチルド輸出の中心は、低価格製品がほとん
どであり、日本向けなど高価格製品への直接的な影響は想定されていない。

 今後、米国向けは年末にかけてのミレニアム需要に伴い、輸出量がさらに増加
すると見込まれているが、今後とも安定した輸出量が確保できるかどうかは不透
明である。

◇図:米国向けチルドビーフ輸出の推移(ロイン系)◇

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