◇絵でみる需給動向◇
タイの鶏肉輸出業者の間では、遺伝子組み換え(GM)飼料を用いた鶏肉につ いて、今後のEU向け輸出に対する不安が広がっている。現在、EU向けに輸出さ れる鶏肉は、GM飼料を用いて飼養した鶏についての表示の義務はない。しかし、 コーンスターチや大豆ミールなどの加工品については、GM原料を用いた場合に はその表示が義務付けられていることや、EU地域では「有機」や「放し飼い」と いった特別に認められている表示を行った鶏肉の需要が高いことから、今後、 「非GM」などの表示に需要が高まる可能性や、さらには表示の義務化があると みられている。 なお、最大手の鶏肉インテグレターであるチャロン・ポカパン・グループでは、 既に飼料工場の1つを非GM飼料専用にしており、今後、さらに2工場を非GM飼料 生産用に切り替えることや、飼料用の非GM大豆をインドから購入したことを発 表するなど、鶏肉業界における非GMへの対応を急いでいる。 また、タイブロイラー加工輸出業者協会では、非GM飼料の価格は、一般の飼 料より1トン当たり約480バーツ(1バーツ=約2.8円)高く、他の飼料と分けて流 通・保存する必要があることから、鶏肉1kg当たり約20バーツの値上げとなると 試算している。このため、非GM飼料を用いた場合の輸出競争力の低下が課題で あるとしている。
タイブロイラー加工輸出業者協会の取りまとめた99年8月の鶏肉輸出(速報値) は、冷凍鶏肉の数量が前年比4.1%減の1万8千トン、金額で13.9%減の12億8千万 バーツ、また、鶏肉調製品の数量が3.9%減の6千トン、金額で9.3%減の7億9千 万バーツ、総合計では数量が4.1%減の2万4千トン、金額で12.2%減の20億6千 万バーツとなった。 鶏肉の輸出量は、6月に冷凍鶏肉で前年比6.9%減、鶏肉調製品で15.2%減と減 少に転じてから、その減少幅が小さくなっているものの、3ヵ月連続の減少とな っている。また、冷凍鶏肉、鶏肉調製品ともに輸出金額の下落幅が輸出量の下落 幅を大きく上回っており、輸出価格が低迷していることを示している。
これを地域別に見ると、アジア地域は、冷凍鶏肉で韓国向けの輸出量が前年比 約2倍の396トンと急増したものの、日本向けが5.6%減の11,818トン、中国向けが 59.5%減の358トンと、年初から引き続き大幅に減少している。この結果、地域 全体では2.8%減の13,859トンとわずかな減少となっている。また、鶏肉調製品は、 シンガポール向けが前年比44倍の353トンと引き続き大幅な増加を示したものの、 日本向けが25.1%減の2,915トンと大幅に減少したことから、地域全体でも、16.2 %減の3,287トンと大幅な減少となっている。一方、EU地域向けでは、冷凍鶏肉 が6.2%減の4,280トンとなったものの、鶏肉調製品は、21.2%増の2,325トンと大 幅な増加となっている。この結果、EU地域向け全体の合計では、1.9%増の6,605 トンとわずかな増加となっている。 なお、最近の動向としては、日本向け冷凍鶏肉の輸出価格が、ブラジルや中国 の輸出価格の低下を反映して、1トン当たり1,500〜1,600ドルと、これまで1,900 ドル程度で推移していた水準より大幅に下がっており、今後さらなる低下が予想 されている。
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