牛肉の由来等に関する表示義務化の開始延期を提案(EU)


遅れる牛肉の由来を追跡するシステムの構築

 EUにおける牛肉の由来等に関する表示については、97年に理事会規則EC/820
/97で定められている。この規則は、牛の登録・個体識別システムを整備し、牛
肉の由来を追跡できるシステムを構築することにより、牛海綿状脳症(BSE)等
の問題に的確に対応できる体制の整備を主な目的としている。また、消費者に的
確な情報を提供するため、2000年1月1日から牛肉の由来等に関する表示を行うこ
とを規定している。

 しかし、現行の規則に基づく牛個体情報のデータベース化等の実施状況は、い
くつかの加盟国で対応の遅れがみられている。

 また、この規則は、採択に当たり農相理事会単独で審議されたため、EU委員会
は、EU議会との共同審議を伴わない制定プロセスを不当とし、欧州裁判所に提訴
していた。欧州裁判所は99年2月、現行の規定は違法であるとの勧告を行い、近
々最終的な裁定が下される見込みである。


EU委員会、牛肉表示の実施に関する新たな計画を提案

 こうした状況を踏まえ、EU委員会は10月13日、牛肉表示の実施に関する新たな
計画を提案するとともに、現行の規則で定めている牛肉表示の開始時期を、新た
な実施計画が採択された1ヵ月後(最長2001年1月1日)まで延長する提案を行っ
た。

 この計画は2段階で実施され、すべての加盟国で牛肉の由来について表示を義
務付けるものとなっている。その概要は、次の通りである。

 第1段階は、牛個体の登録および追跡システムが完全に整備されていない場合、
十分な履歴等を記録したパスポートのない牛がと畜されることが想定されるため、
と畜場段階で最低限、次の項目を表示する。

・牛個体と牛肉をつなぐ番号(コード)
・牛と畜場承認番号および国名等
・牛肉加工施設承認番号および国名等
・牛カテゴリー、と畜日、最低熟成期間


2003年以降、登録情報に基づき表示項目を追加

 第2段階は、2003年以降、牛個体の登録システムの情報に基づき、次の項目を
追加する。 

・牛個体が生産(誕生)、肥育、と畜および加工されたそれぞれの国、地域等

 ただし、牛個体の生産(誕生)、肥育、と畜および加工場所の表示は、次の通
り簡略表示される。

 @加盟国(単一)の場合:「○○国産」または「EC産」
 A加盟国(複数)の場合:「EC産」または「EC(2ヵ国以上)産」
 B加盟国および非加盟国の場合:「EC産および非EC産」
 C非加盟国の場合:「○○国産」または「非EC産」

 また、ひき肉および切り落とし牛肉等を生産または流通する場合、最低限当該
牛肉が生産された加盟国名、加工場所または第3国名を表示しなければならない。

 なお、この提案は、今後、農相理事会およびEU議会で共同審議されることとな
っている。

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