低調傾向の今年の飼料産業(中国)


世界第2位の生産を誇る中国の飼料産業

 中国の飼料産業の始まりは、70年代中〜後期と言われており、開始から20数年
というまだ歴史の浅い産業である。特に、「飼料工業」という言葉が中国で使わ
れ始めたのは、農村経済改革が始まった79年以降とされている。当初、年間2百
万トン程度の飼料生産量は、80年代半ばから90年代の畜産業の急速な発展ととも
に飛躍的な伸びを見せ、98年の生産量は約6千6百万トンに達した。また、83年以
降の外資系飼料企業の参入や、飼料企業に対する税制上の優遇政策などにより、
最近の生産量は、連続して世界第2位となっている。

 こうした中、85年には、全国の飼料産業の管理を行う行政機関として、全国飼
料工業弁公室が設立された。また、今年5月には、飼料や飼料添加剤の安全面、
衛生面の管理などを主眼とした「飼料および飼料添加剤管理条例」が公布され、
7月には、同条例公布後初めて、国内12社に対し、検査により不合格となった輸
入飼料添加剤の販売を禁止する措置がとられた。


生産、価格、収益とも減少

 これまで発展の一途をたどってきた飼料業界だが、99年上半期の飼料産業は、
生産量、価格、収益とも下降する情勢が続いた。全国飼料工業弁公室によると、
生産量は前年同期に比べて10%以上の減少となった。また、97年11月ころから比
較的安定していた飼料価格も、98年後半から緩やかに下落し始め、99年に入ると
下降の一途をたどった。飼料生産量の5割近くを占める豚用飼料の1トン当たりの
価格(全国平均)は、今年1月に1,770元だったものが月を追うごとに下落を続け、
6月は1,660元(前年同月比90.2%)と、1月に比べ6.2%も下落した。なお、直近
の公表データである10月の豚用飼料価格は、1トン当たり1,600元とさらに下落し
ている。こうしたことから、中小企業の多くはかなりの赤字に陥り、倒産する飼
料企業も出ている。大規模な飼料企業でも、稼働率が2割から3割程度で、規模の
メリットを生かした十分な収益を上げることができない状況となっている。

◇図:配合飼料の市場価格の推移◇


課題の多い飼料業界

 飼料産業が低調気味となった背景には、@収入減による食肉など畜産物の消費
減退や供給過剰による価格低迷などで、養豚業を始めとする畜産業が全体的に振
るわないこと、A飼料原料価格が、内外を問わず低迷していること、Bし烈な競
争が続く飼料市場において、飼料企業が中間業者に価格面などで譲歩を余儀なく
されていることなどがあると言われている。飼料業界自体も、飼料工場の稼働率
が低いこと、技術レベルや管理レベルが十分な水準に達していないこと、市場競
争力が弱いことなどから、市場の動向に即座に反応し、適時に効果的な措置をと
ることができないという問題を抱えている。また、余剰な穀物については、飼料
効率などの面から配合飼料などへの加工の必要性が叫ばれているにもかかわらず、
農村部では、相変わらずそのままの形で家畜に給与しているところが多いという
ことも、飼料産業の発展にとってマイナス要因となっていると言われる。

 さらに、大きな問題として、中国の飼料産業が、原料立地でなく需要地立地と
なっていることがあると言われている。中国では、飼料生産量の約8〜9割を占め
る配合飼料の最大の原料であるトウモロコシが、山東省、吉林省、黒竜江省など
北部の地方で多く生産されているのに対し、飼料工場は、比較的畜産業のさかん
な広東省、四川省など南部の地方に多く分布している。この傾向は、年を追うご
とに拡大する傾向にあるとも言われており、北部の原料産地と、南部の需要地と
の間の輸送体制を、いかに円滑に確保するかということが、一層重要な課題とな
っている。

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