遺伝子組み換え(GM)食品のラベル表示を計画(タイ)


GM作物の栽培は禁止、輸入は許可

 タイ農業省は、同国から輸出される食品がGM食品でないことを保証するため、
ラベル表示を行うことを計画していると発表した。

 タイでは、GM作物を栽培することは法律で禁じられているが、GM作物を輸入
することは認められており、2年前から多くのGM作物が、加工食品の原料や家
畜用飼料として輸入されている。タイにおける年間の大豆生産量は30万トン、輸
入量は80万トン程度であるが、タイ大豆穀物生産者協会では、そのうち25万トン
程度をGM大豆とみている。


政府は公聴会を開催

 このような中、農業省は9月にGM作物に関する公聴会を開催し、約250人の参
加を得て、賛成派と反対派それぞれから意見を聴いた。その結果、今後の対策と
して、健康と環境に対する安全性を第1に考え、@GM作物の栽培禁止の継続、A
加工食品や飼料の原料として輸入される大豆、トウモロコシなどについてのGM
の表示、B食料医薬品局と連携した、大豆油などを用いた食品の検査の実施、C
輸出製品にGM作物を使用している場合には、その旨を表示する  などの措置
をとることとした。

 この公聴会が開催された背景には、タイ北部地域で採取された綿花の中に、殺
虫効果を持つGM綿花が含まれていたことがあり、この件については、非政府組
織をも含めたメンバーによる調査団を現地に派遣することとした。


民間業者は検査・認証制度の充実を要望

 一方、タイの民間企業からは、GM食品に対する検査、認証制度の充実を要望
する声が、日増しに強くなっている。今年9月には、ドイツ向けに小麦粉を輸出
しようとした業者が、GM大豆を取り扱っているという理由から輸出を断られて
いる。また、鶏肉の主要な輸出先であるイギリスのスーパーマーケットから、G
M作物を飼料に使った鶏および水産物とその加工品には、その旨を表示しなけれ
ばならないとの通知を受け取った業者もある。これらの業者は、政府に対し早急
な対応を求めており、輸出産業を中心にその要望は強まってきている。

 また、タイには、GMの検査施設が、科学技術環境省の研究所とカセサト大学
食品工学研究室の国内2ヵ所しかないが、多くの食品サンプルが、検査のためこ
れらの検査施設に持ち込まれ始めている。だが、両検査施設とも、非GM作物の
証明書の発行機関と認定されておらず、サンプルのDNA検査の結果を通知するの
みにとどまっている。こうしたことから、農業省でも早期に公的検査認証機関の
設置を計画するなど、対応に追われている。

 しかし、これらの検査機関においても、加工食品や、魚缶詰に多く用いられて
いる大豆油の検査を行うことができない状況にあるなど、ラベル表示の実施には
多くの課題が残されているようである。

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