EU基準に対応した改善が進むタイ鶏肉処理施設


EUの輸出基準に合わせ、鶏肉処理施設を改善

 タイの鶏肉処理加工業者(以下「加工業者」という。)は、EUが求める輸出基
準を満たすため、鶏肉処理施設改善の準備を進めてきており、現段階においては、
ほとんどが万全の態勢にあるとしている。

 業界団体によると、来る12月6〜17日にかけて実施が予定されている、EUの検
査官による処理施設の検査に合格するため、加工業者は、トータルで10億バーツ
(約28億円:1バーツ=約2.8円)を費やし、20の処理施設を改善・補修した。ま
た、生産段階においても、2003年1月1日からブロイラーに適用が見込まれるEUの
動物愛護基準に従い、飼料の生産から鶏舎に至る全施設にわたってシステムなど
の改善が行われた。


EUの検査に神経とがらす加工業者

 ドイツ、フィンランド、ベルギーなどEU加盟国の専門家によって行われるEU
の検査内容は、鶏の出荷および処理・加工方法、農家の飼養管理、飼料の生産お
よび動物愛護の実施状況などとなっている。特に、飼料については、ベルギーで
飼料に混入して大きな問題となったダイオキシンの有無に主眼を置いている。ま
た、そのほかに、加工業者の研究室および衛生検査実験室なども調査することと
なっている。

 このような中、タイの大手加工業者であるチャロン・ポカパン(CP)は、3年
前からEUの基準を満たすべく準備を行ってきた。また、CPは、500店舗以上を有
し、仕入れなどに関し非常に厳しい基準を持つイギリスの大手量販店から、飼料
生産システム、鶏の健康管理システムおよび処理システムについて問題ないとの
お墨付きを得ており、年末に実施されるEUの検査には、自信を深めている。

 一方で、ある中堅の加工業者は、処理施設内の室温を、EUの基準である10度か
ら12度に保つため、生産ラインの室温を制御する冷却装置などの改良に、多額の
出費を強いられている。さらに、動物愛護規則に基づき、鶏が処理されるまでに
待機する場所の環境を良好に保つため、換気装置および天井の改修などのほか、
生産段階でも、鶏舎の改修などに多額の投資を要している。

 また、既にブラジルで実施された検査で、40工場のうち20工場のみが合格であ
ったという情報を受け、加工業者の多くは、EUの厳しい規則に対処するため、細
部に至るまで神経をとがらせている。


EU市場の確保のため、政府も実務体制を改革

 一方、タイ畜産局は、EUによる検査を遺漏のないものとするため、政府内の関
連する部局と連絡を密にするとともに、それぞれの部局が保持する情報を共有す
るなど、実務作業システムの改革を行っている。同時に畜産局は、EUの検査が行
われる以前、遅くとも11月までに、処理施設がEUの基準に合致するかについて、
最終チェックを行うこととしている。

 最近、タイの鶏肉輸出は、EU向けについては、利益商品であるむね肉に伸び悩
みが見られ、また、日本向けについても、中国やブラジルの低価格商品などに押
され、非常に厳しい状況となっている。今後、タイが輸出の安定化を図るために
は、利益が見込めるEU市場の確保が先決で、このためにも、EUの検査に合格す
ることが、加工業者にとって重要な課題となっている。

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