WTO上級委、カナダの乳価制度を輸出補助金と裁定(米国、カナダ)


パネルの裁定を支持

 世界貿易機関(WTO)上級委員会は10月13日、米国およびニュージーランドの
提訴を受けて争われてきたカナダの乳価制度について、輸出補助金と認定し、W
TO協定違反としたWTO紛争処理小委員会(パネル)の判断を支持する裁定を下し
た。

 カナダ政府は95年に、乳価分類の見直しを行い、国内向けに加えて、輸出向け
主体のスペシャルクラスを設定し、実質的な二重価格制度を導入した。乳業者は、
輸出向け生乳には国内向けに比べて安い乳代を支払うことから、この制度は輸出
補助金に相当し、WTO協定に違反するとして、米通商代表部(USTR)は、国内乳
業界の陳情も受けて、WTO提訴に踏み切った。米国側は、この制度が輸出補助金
に相当すれば、カナダがWTOに譲許した輸出補助金の上限を過去3年間で1億6千
万ドル(約171億円:1ドル=107円)超過していると主張した。

 その後、米・加間の2国間協議を経てパネルが設置され、99年3月には米国の主
張を認める裁定が下されたが、カナダ側は7月15日、裁定結果を不服として上級
委員会へ控訴していた。なお、乳製品の主要輸出国であるニュージーランドも、
米国に同調して提訴に加わっている(詳細については、本誌99年6月号「トピッ
クス」参照)。


飲用牛乳の関税割当はシロと裁定

 一方、もう1つの争点であったカナダの飲用牛乳の関税割当について、WTO上
級委員会は、対象をカナダ入国の際の個人消費用の持ち込みに限定している現行
制度を認める判断を下し、WTO協定違反とするパネルの裁定を退けた。

 カナダの飲用牛乳の輸入については、ガット・ウルグアイラウンド合意による
市場アクセスの一環として、6万4千5百トンの関税割当が設定されたが、対象が
制限されていることにつき、米国はWTO協定違反と主張し、パネルもこれを支持
する判断を下していた。

 なお、WTO上級委員会は、個人消費用として持ち込める飲用牛乳の価格制限
(1回につき20カナダドル(約1,460円:1カナダドル=73円))については、こ
れをWTO協定違反とするパネル裁定を支持する決定を下した。


WTO次期交渉に影響も

 今回の裁定結果について、バシェフスキー米通商代表は、WTO協定の履行義務
を回避しようとする行為は認められないことを明確に示したものと称賛した。ま
た、今回示された輸出補助金に関する規律が、間近に控えた新ラウンドの輸出補
助金削減交渉に当たって重要な基準を与えてくれたと語った。

 一方、カナダのバンクリフ農業・農産食料相は、飲用牛乳の関税割当制度にお
ける制限が認められたことは、我々の努力が実を結んだためと喜びを表した。同
大臣は、乳価制度が輸出補助金とされた件では、今後調整する必要があるものの、
カナダの生乳供給管理システム自体は、今後も強固なまま存続するとしている。

 カナダは、裁定後60日以内に裁定の実施に関する意思をWTOへ通報することと
されており、今後政府、業界関係者などで政策の調整方法についての協議が予定
されている。

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