2000年度農業関連歳出法案が成立(米国)


予算総額は約690億ドル

 2000年度(99年10月1日〜2000年9月30日)の農業関連歳出法案は、下院および
上院でそれぞれ10月1日および13日に可決された後、10月22日にクリントン米大
統領の署名により成立した。

 総額は、約690億ドル(約7兆3千8百億円:1ドル=107円)で、通常の米農務省
関連の予算が措置されたほか、額の規模などが争点となっていた緊急農家支援対
策が、87億ドル(約9千3百億円)に決定された。この中で、災害対策として、ハ
リケーン、洪水、干ばつなどの自然災害による被害を受けた農家に対して2千5
百万ドル(約27億円)の緊急災害融資などを行うほか、畜産農家には、災害によ
る牧草地や飼料畑の被害援助費として2億ドル(約214億円)が支出されることと
なった。

 また、この枠組みの中で、農産物価格低迷に対する農家経営安定対策として、
農家直接固定支払制度に基づく支払額の追加という形で、同制度の対象となって
いる穀物(綿花を含む。)の生産者に対して、総額55億ドル(約5千9百億円)の
所得補てんが実施される(注:通常支払い額は、51億ドル(約5千5百億円)。)。
実際の支払いについては、大統領が署名した日の翌週から支給手続きが開始され
るなど迅速な対応が図られている。


加工原料乳価格支持制度は1年延長

 畜産関係では、加工原料乳価格支持制度の1年間延長や食肉加工処理業者(パ
ッカー)に対する取引価格などの報告の義務化が含まれている。加工原料乳価格
支持制度については、96年農業法により2000年以降廃止されることとされていた。
しかし、連邦ミルク・マーケティング・オーダー制度改革の影響などを危ぐする
生乳生産者団体の強い要望を反映して、今回の農業関連歳出法案に延長の提案が
組み込まれ、結果的に99年と同水準の支持価格(9.90ドル/100ポンド:23.4円/
kg)で1年間延長することが決定された。


食肉取引情報の報告が義務化

 また、肉牛、肉豚生産者団体などの要望が強かったパッカーに対する取引情報
の報告義務化も、農業関連歳出法案に組み入れられて実現することとなった(こ
れまでの経緯については、本誌99年7月号「トピックス」参照)。この制度では、
年間処理頭数が牛で12万5千頭以上または豚で10万頭以上の豚のパッカーは、価
格、数量、条件などの取引情報を毎日報告することが義務付けられる。

 しかし、後日、この制度に対する予算措置が講じられていないことが判明した
ことから、グリックマン農務長官は、議会関係者に対して、予算を確保するよう
要請した。これに対して、議会関係者は、米農務省内の予算の流用によって対応
は可能なはずと反論しており、実施にはしばらく時間がかかりそうな状況となっ
ている。


グリックマン長官、農業法の不備に言及

 96年農業法で生産調整や不足払い制度を廃止し、より市場志向的な政策を導入
したものの、市況の低迷から昨年度に引き続き多額の農家救済策が必要となった
ことなどから、グリックマン農務長官は記者会見で「96年農業法は生産者に対し
て十分なセーフティーネットを与えるものではない」と、その不備を認める発言
をした。さらに同長官は、「2年連続で農家への緊急支払いを実施することで、
議会は96年農業法を実質的に修正したようなもの。我々は、2002年の現行農業法
の失効を待たずに政策の変更に取り組むべきである。」と述べた。

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