波紋を呼ぶ巨大養豚企業の買収(米国)


肥育豚出荷頭数の15%を掌握へ

 豚肉の一貫生産企業(インテグレーター)で、豚肉生産では世界最大規模を誇
るスミスフィールド社(本社バージニア州)は、9月2日に全米最大の養豚企業で
あるマーフィー・ファミリー・ファーム社の買収を発表したのに続き、9月29日
にはタイソンフーズ社の養豚部門を買収することを明らかにした。

 スミスフィールド社は、これらの買収手続きが来年早々にも完了すると見込ん
でいるが、これらが実現した場合、同社の母豚頭数は、80万頭に迫るとみられて
いる。これは、第2位のコンティグループ社(本社ミズーリ州)の4.8倍、第3
位のシーボード社(本社カンザス州)の5.4倍の規模に相当し、他社を大きく引
き離すことになる。

 また、年間出荷頭数についても、1千3百万頭から1千8百万頭程度の出荷が見込
まれるとされており、この結果、全米の年間出荷頭数に占めるシェアも約15%に
達するものとみられている。

 スミスフィールド社は、今年の春にも全米第3位の規模を有していたキャロル
ズ・フーズ社を買収し、現在、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州、ユタ
州、コロラド州、およびバージニア州で肉豚の生産を行っている。


圧倒的な巨大化に懸念の声

 スミスフィールド社の圧倒的な巨大化には、各方面から懸念の声が上がってい
る。グリックマン米農務長官は、マーフィー・ファミリー・ファーム社買収の発
表後、レノ司法長官に書簡を送り、本件について、公正で十分な競争を妨げない
か、中小養豚農家とその地域社会に悪影響を及ぼさないかといった観点から慎重
に調査を行うよう要請した。

 また、全米最大の豚飼養頭数を有し、家族経営の多いアイオワ州選出のハーキ
ン上院議員も、同社の相次ぐ買収は、豚肉産業の垂直統合を必要以上に推進する
もので、米国の農村社会に悪影響を及ぼすものと批判し、司法省の独占禁止法担
当者に最大限の厳しさをもって調査に当たるよう要望している。


成り行きが注目される司法サイドの判断

 司法当局の判断については、97年にタイソンフーズ社がハドソンフーズ社の買
収を発表した際、鶏肉市場の2割強のシェアを占めることが見込まれたにもかか
わらず、司法省は、躊躇(ちゅうちょ)することなくこれを認めている。このた
め、今回も同様の結果になるのではないかと見る向きがある一方、肥育豚価格の
低迷の一因とも指摘される巨大インテグレーターの出現は、鶏肉の事例とは状況
が異なるとする見方もあり、今後どのような判断が下されるのかが注目される。

(参考)米国の養豚企業ランキング
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 資料:「Successful Farming」99年10月号より推計。
  注:a)2件の買収を含む。

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