EUの牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○牛飼養頭数は微減傾向続く


総飼養頭数は前年同期比0.5%減

 欧州統計局は、98年12月時点の牛飼養頭数を発表した。これによると、EUの総
飼養頭数は、前年同期比0.5%減(41万2千頭減)の8,286万頭となった。90年代に
入ってからの総飼養頭数の動きを見ると、91〜93年は減少傾向、94〜96年はほぼ
横ばいで推移したものの、97〜98年は再び減少した(資料19ページ参照)。

 総飼養頭数が近年わずかずつではあるものの減少した要因としては、乳用牛の
長期的な減少傾向が挙げられるが、加えて、96年にイギリスで発生した牛海綿状
脳症(BSE)問題に伴う防疫上のとう汰(300万頭弱(99年2月末現在))や、こ
れによる牛肉消費の減退から過剰対策として実施された子牛のと畜奨励事業(約
240万頭(同))も影響したものと考えられる。


上位3カ国で減少、中堅国で増加

 国別の増減を見ると、飼養頭数が1千万頭を超えるフランス、ドイツ、イギリ
スの上位3ヵ国では、それぞれ2,007万3千頭(0.4%減)、1,495万3千頭(1.8%減)、
1,123万8千頭(1.0%減)と減少しており、全体の頭数減に大きく影響している。

 一方、牛肉生産の中堅国であるアイルランド、スペインでは、それぞれ1.4%、
3.1%増加した。アイルランドは、人口が少なく牛肉の国内市場が極めて小さいこ
とから、域内を含めた輸出振興に力を注いでおり、BSE問題発生以降の厳しい経
営環境の中にありながら安定的な頭数拡大が見られる。また、スペインでは、国
内消費が順調なことから増産意欲が強まっているものとみられ、3.1%増と最も高
い伸び率を示した。


乳用経産牛は減少、肉用経産牛は増加

 乳用経産牛と肉用経産牛の頭数レベルは、将来の飼養頭数を予測する上で重要
なカギを握っているが、乳用経産牛は前年同期比0.9%減少したのに対し、肉用
経産牛は1.0%増加した。このような傾向は、90年代に入ってからほぼ一貫した
傾向である。乳用経産牛の減少は、生乳クォータを拡大できない状況の下、1頭
当たりの乳量が増加していることに起因している。一方、肉用経産牛は、繁殖雌
牛奨励金制度(肉牛生産者の所得を補償するため、母乳で子牛を育てる雌牛を対
象に奨励金を交付する制度。ただし、交付上限頭数が設定されている。)が、結
果として増頭を促す効果があったものと考えられる。

 全体の飼養頭数に占める乳用経産牛および肉用経産牛の割合は、それぞれ26%、
14%となっており、10年前(88年)の31%、10%から両者のシェアは徐々に近づ
きつつある。これを国別に見ると状況は大きく異なり、ドイツ、イタリア、オラ
ンダなどでは圧倒的に乳用経産牛の割合が高いのに対し、フランス、アイルラン
ドでは、両者はほぼ拮抗している。スペインでは、肉用経産牛が乳用経産牛を大
きく上回っている。


中期的にはCAP改革が少なからず影響か

 3月のEU首脳会議で合意に達した共通農業政策(CAP)改革では、価格支持か
ら所得補償への政策転換がその柱となっている。 酪農部門では、価格支持水準
が15%引き下げられるとともに直接所得補償として乳牛奨励金が新設される。ま
た、生乳クォータが全体で2.4%引き上げられる。牛肉部門では、価格支持水準
が20%引き下げられるとともに各種奨励金が増額および新設される。また、繁殖
雌牛奨励金と雄牛特別奨励金の交付上限頭数が変更される。

 EUの肉用牛経営および酪農経営は、需給動向に加え政策にも大きく左右される
ことから、今回のCAP改革が中期的にEUの牛飼養頭数に何らかの影響を及ぼすも
のと考えられる。

EU主要国の牛飼養頭数(98年12月)
be-eu05.gif (4350 バイト)
 資料:欧州統計局
  注:数値は暫定値

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