米国の牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○99年第1四半期、牛肉輸出は増加、対照的に輸入は減少


メキシコおよび韓国向け輸出が好調

 米農務省(USDA)によると、99年第1四半期(1〜3月)の牛肉輸出量(枝肉換
算ベース。以下同じ。)は、前年同期比12.6%増の25万6千トンと高い伸びを示し
た。これを輸出先別に見ると、日本、カナダ向けが前年並みとなっている中で、
メキシコ、韓国向けが大幅に増加している。

 メキシコ向けの牛肉輸出量は96年以降急激に拡大している。最近やや伸びが鈍
化しているものの、99年第1四半期は同16.7%増の4万6千トンと依然として10%
を超える高い伸びを維持している。メキシコ北部を中心とした干ばつなどによる
飼養頭数の減少で国内の牛肉生産が伸び悩んでいる一方、経済回復に伴って牛肉
消費量が増加していることが輸出増加の要因となっている。また、通貨ペソの対
米ドル相場がドル高基調となっている中で、割高となった繁殖用家畜の米国から
メキシコへの輸出が減少し、反対に肥育素牛のメキシコからの輸入が増加してい
ることが、メキシコの牛飼養頭数の減少に拍車をかけている。

 韓国向けの輸出量は前年同期に比べて約2.5倍の3万3千トンに回復した。韓国
は97年後半からの経済危機による国内の牛肉消費減退を受けて、一般入札、SBS
枠ともに98年の輸入枠の公表が大幅に遅れた。今期の高い伸びは、98年第1四半
期の韓国向けの輸出量が低い水準にとどまっていた(97年同期は2万8千トン)こ
とが大きく影響している。2001年の韓国の牛肉輸入自由化までに完全に輸入枠が
消化されない事態を憂慮した米国が、韓国国内の輸入牛肉販売規制などについて
2国間協議を要請した。しかし、結論が出なかったため、この問題を審議する世
界貿易機関(WTO)紛争処理小委員会(パネル)が5月26日に設置されている。

◇図:第1四半期の牛肉国別輸出量◇


対照的に牛肉輸入量は前年同期比2.5%減少

 好調な牛肉輸出とは対照的に99年第1四半期の牛肉輸入量は、前年同期比2.5%
減の28万5千トンとなった。これを、輸入先別に見ると、ニュージーランドから
の輸入量は同27.3%減の4万1千トンと大幅に落ち込んだ。ニュージーランドでは、
97年から2年に渡る干ばつにより、繁殖雌牛のと畜が進んだため飼養頭数が減少
している。このため、99年の牛肉生産量は減少するとみられている。一方、豪州
やカナダからの輸入量は、ニュージーランドからの輸入減少などにより、米国で
の加工用牛肉の価格が上昇していることを受けて増加している。また、輸入量は
少ないものの、ブラジルの通貨危機などによるメルコスール域内の牛肉消費減退
で牛肉価格が低下しているアルゼンチンなど南米諸国からの輸入量も増加してい
る。

◇図:第1四半期の牛肉国別輸入量◇


99年は輸入、輸出とも増加の見込み

 なお、USDAでは、99年通年での牛肉の輸出入について、輸出量は前年比12.8%
増の111万1千トン、輸入量はキャトルサイクルの下降局面で加工向け牛肉の国内
生産が減少するとして、前年比2.5%増の122万8千トンといずれも前年に比べ増
加すると予測している。

◇図:米国における牛肉の輸出入量◇

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