◇絵でみる需給動向◇
豪州酪農庁(ADC)によると、98/99年度の期首からの9ヵ月間(98年7月〜99 年3月)のバターなどの乳脂肪製品(バターオイルなどを含む)の生産量は、前 年同期を11.3%上回る14万4千トンとなった。 近年、豪州における生乳生産量が一貫した増加基調を続ける中、飲用乳需要が 伸び悩んでいることから、生乳生産の約8割を占める乳製品の生産は増加傾向に ある。特に乳脂肪製品の生産は、95/96年度以降、増加傾向が続いている。98/ 99年度9ヵ月間の生乳生産量を見ると、前年同期を6.8%上回る836万4千キロリッ トルとなっており、うち飲用向けは、前年を0.8%上回る144万2千キロリットル であることから、増加分のほとんどは加工に仕向けられていることがうかがえる。 ◇図:乳脂肪製品の生産量および輸出量の推移◇
乳脂肪製品は生産の約6割が輸出に仕向けられており、98/99年度の9ヵ月間で は前年同期を1.1%上回る8万トンが輸出された。主要な輸出先である東南アジア 向けの大部分が著しく減少したものの、北アフリカ、北米向けなどが好調であっ たことから、その減少分を相殺することとなった。中でもエジプトおよびメキシ コ向けは、前年同期の2倍以上の伸びを見せ、それぞれ第1位、第2位の市場へと 躍り出た。
このうちバターの輸出量は、前年同期を10.5%下回る4万トンであった。国別で は、最大の仕向け先となったエジプト向けが前年同期の2.5倍の1万1千トンとなっ たほか、第4位の米国向けが同5.4倍の3千トンとなった。しかし、前年同期では最 大シェアを有していたロシア向けが前年同期比73.0%減の2千トンになったのを始 め、東南アジア向けが激減したことから前年水準をかなりの程度下回ることとな った。 無水バターおよびギーなどの輸出量は、前年同期を15.6%上回る4万1千トンと なり、バターと対照的にかなり大きく増加した。これは、豪州にとって伝統的な 輸出市場である東南アジア向けが大幅に減少したものの、メキシコ、米国向けな ど新興市場の健闘が影響している。 ◇図:バターの国別輸出割合◇ ◇図:無水バターおよびギーの国別輸出割合◇
近年、消費者のバター離れが問題視されていた豪州では、昨年からのADCによ るバターの風味を強調した販売促進キャンペーンが功を奏し、家庭での消費が増 加していると言われている。一部では、同キャンペーン開始以来、バターの家庭 消費は8%伸びたとされており、今後、輸出についても新興市場を中心に更なる 需要の拡大が見られれば、豪州におけるバターなど乳脂肪製品の生産は活況を呈 するであろう。
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