EUの牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○飼養頭数は依然減少も、乳量は増加


98年12月の乳用経産牛頭数は前年同期比0.9%減

 欧州統計局発表の98年12月現在の牛飼養動向調査によると、EU15ヵ国の乳用経
産牛の飼養頭数は国別で増減があるものの、前年同期比0.9%減の約2,152万頭
(暫定値)と前年に引き続き減少した。

 国別に見ると、最も増加したのは、好調な輸出によりチーズ生産が増加してい
るオーストリアで前年同期比7.5%増の72万9千頭となった。また、近年、牛乳・
乳製品の消費が着実に伸びているとされるスペインが4.1%増の130万6千頭、酪
農家が生乳生産割当(クォータ)制度の課徴金支払をめぐり政府やEU委員会に抗
議行動を行ったイタリアが1.5%増の211万頭などとなった。逆に、最も減少した
のはチーズ輸出の減少が伝えられているオランダで前年同期比4.4%減の160万頭、
EUで最も乳用経産牛を飼養しているドイツおよびそれに続くフランスで、それぞ
れ、3.7%減の483万8千頭、1.0%減の443万3千頭などとなった。なお、この2ヵ国
でEUの総飼養頭数の4割以上を占める。


1頭当たりの乳量は75年と比べると5割近くの増加

 一方、欧州統計局は、97年までのEUにおける乳用経産牛1頭当たりの年間平均
乳量を公表した。これによると、97年のEU15ヵ国の平均乳量は5,435kgと前年並
みとなった。国別に見ると、スウェーデン(7,109kg)、オランダ(6,722kg)、
デンマーク(6,688kg)およびフィンランド(6,168kg)の4ヵ国が6,000kgを超え
る一方、ギリシャ(4,083kg)が最も低くスウェーデンの6割以下の水準となって
おり、加盟国間の格差が大きい。平均乳量は、一般的に北部加盟国で高く、南部
加盟国で低い傾向にある。

 しかし、75年のEU平均乳量(9ヵ国で3,669kg)と比較すると22年間で48.1%
(1,766kg)と大幅に増加した。要因の1つとして、飼養管理技術の改善および育
種改良による生産性の向上などが挙げられる。さらに84年のクォータ制度の導入
が生産量を抑制させる一方で、酪農家が経営安定のため、1頭当たりの乳量を増
加させる動きが強まったとしている。これにより、クォータ制度の下、生乳生産
量は安定的に推移したことから、乳用経産牛飼養頭数は一貫して減少することと
なった。

 また、この期間における平均乳量の増加率が大きかったのは、フランス(74%
増)、イタリア(60.5%増)などで、これらの加盟国では飼養頭数の減少および
経営規模拡大の進展が他の加盟国に比べて大きかった。なお、EU全体の平均乳量
の増加傾向は継続しているものの、最近の増加率は80年代以前と比較して鈍化し
ている。


今後のクォータ数量の増加が乳用経産牛の飼養動向に影響か

 こうした中で、3月26日のEU首脳会議で最終合意された共通農業政策(CAP)
改革では、クォータは、2005年度(年度は4月〜3月)から2007年度にかけて加盟
国へ0.5%ずつ、合計1.5%の増枠が行われる。ただし、酪農家からのクォータ増
加の要求が強かったイタリア、スペイン、ギリシャ、アイルランドおよびイギリ
スの北アイルランド地域については、2000年度および2001年度でこれを上回る増
枠が行われる。この結果、総計で2.4%の増枠(全体で約1億2千万トン(酪農家
の直接販売クォータを含む))が行われることになる。ただし、クォータ制度は
その将来の存続について、2003年に見直されることとなっている。こうした動き
は、これまで一貫して減少傾向にあったEUの乳用経産牛の飼養動向に、何らかの
影響を及ぼすことも考えられる。

EU主要国の乳用経産牛の飼養頭数および年間平均乳量
mi-eu05.gif (6317 バイト)
 資料:イギリス食肉家畜委員会「European Market Survey」、
    欧州統計局、農林水産省「畜産統計」、「牛乳乳製品統計」
 注1:*は暫定値
  2:飼養頭数は、EUが12月現在、日本が2月現在
  3:75年のEUの平均乳量は9ヵ国

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