EUの豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○豚肉の生産増は99年も続く見込み



99年は前年比3.4%増の見込み

 EU委員会の豚肉常設委員会予測グループ(域内の豚肉業界関係者で構成される
が、EUに対する拘束力はない)によると、99年の豚肉生産量(枝肉ベース)は前
年比3.4%増の1,810万トン(60万トン程度の増産)と見込まれている。

 EUでは、96年3月にイギリスで再燃した牛海綿状脳症(BSE)問題で、牛肉の代
替として豚肉需要が高まり、また、97年2月には生体豚の主要輸出国であるオラ
ンダを中心とした豚コレラの発生に伴う大量の豚の処分などで、域内豚肉需給が
ひっ迫し価格が堅調に推移したことなどから、豚の生産が刺激された。この結果、
98年の生産量は前年比約7%程度増加したものとみられている。


生産増に及ばない域内需要・輸出

 一方、域内需要や輸出は近年増加しているものの、生産量の増加には及ばない。
特に、98年8月にはEU最大の豚肉輸出先であるロシア(97年の輸出量は、製品重
量ベースで域外向け輸出の3割以上を占める約34万トン)が経済危機に陥り、輸
出が一時ストップしたことから、需給は一層緩和し価格は低迷している(左図参
照)。

 しかし、こうした状況にもかかわらず、生産は今年第3四半期まで増産傾向が
続き、第4四半期以降にようやく前年を下回る見込みである。これは、EUには豚
の生産抑制対策がない中で、専業化の進む養豚農家は生産を止めるに止められな
い事情にあり、これが一般的な理由とみられている。例えば、EU最大の豚肉輸出
国であるデンマークでは、96年および97年の好況時の利益がほとんど設備投資に
回されたと言われている。


PSAやロシア向け輸出補助金大幅引き上げも、価格は低水準続く

 EUは需給緩和と価格低迷の中で、98年9月28日から99年4月19日まで民間在庫補
助制度(PSA)を発動した。今回のPSAにより、約28万1千トン(製品重量ベース)
が適用を受けたが、これは、EUの年間豚肉輸出量(97年で約106万トン、加工品
などを含む)の3割近くに相当する。PSAによる保管期間は4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月
の3通りあるが、6割以上が6ヵ月の保管期間となっている。また、国別の在庫量
を見ると4割近くをデンマーク産が占めている。一方、保管期間が終了したPSAか
らの豚肉の一部が既に域内市場に放出されており、価格回復の足かせになってい
るとも言われている。

 また、昨年5月から再開された輸出補助金は、その後数回増額されている。特
に、ロシア向け輸出は、域内需給回復のカギを握っているとも言えるため、輸出
補助金も70ユーロ(約9,100円:1ユーロ=130円)/100kgと高額になっている。
現在の豚肉の平均価格(約100ユーロ(約1万3千円)/枝肉100kg)から見ると7
割に相当する。このほかEUは、今年8月15日までに10万トンの豚肉(枝肉ベース)
をロシア向けに食糧援助物資として輸出することとしている。輸出された豚肉は
同国内で販売され、ロシアはその利益を生活困窮者対策に回す予定である。ただ
し、その販売価格をめぐり、EUとロシアとの折り合いがついていないことなどか
ら輸送が滞っており、現在までのところ豚肉は約2万トンが輸送途上にあるにす
ぎない。

 長引く豚価の低迷から、フランスでは現在、経営資金調達の支援措置など養豚
農家に対する独自の支援策が行われており、ポルトガルもこれと同様の対策を行
う方針である。こうしたことに加え、一部加盟国の養豚農家の経営意欲に減退が
見られることなどから、豚価は第3四半期からは過去最低を記録した前年を上回
って推移するものの、2年前に比べると依然としてかなり低いレベルになると予
想されている。

EUの豚肉生産量および価格見込み(99年)
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 資料:豚肉常設委員会予測グループ

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