畜産物のダイオキシン汚染問題が発生(ベルギー)


政府、5月28日から国産鶏肉・鶏卵の販売中止を指示

 ベルギー政府は、5月28日、同国産鶏肉・鶏卵から高濃度のダイオキシンが検
出されたとして、小売店に対し国産鶏肉・鶏卵の販売を中止するよう指示した。
31日には、販売中止の対象を同国産鶏肉・鶏卵を原料とする製品(マヨネーズ、
ケーキ等)に拡大した。

 ベルギー政府によると、この問題は、99年2月、複数の家きん農家において、
雌種鶏に異常(産卵率、卵重量の低下等)が発生したことに端を発している。家
畜飼料製造会社が原因を調査したところ、飼料が関与していることが判明した。

 さらに専門家による分析の結果、4月26日、飼料および鶏脂肪から高濃度のダ
イオキシンが検出された。この報告を受けてベルギー政府は、関連があるとみら
れる飼料会社の出荷停止、種鶏、鶏卵、鶏肉等追加分析の実施等の措置を講じた。
1ヵ月後の5月26日、検査の結果、雌種鶏およびふ化用鶏卵からも同様の結果が確
認されたため、鶏肉・鶏卵の販売禁止措置を講じるに至った。問題の鶏肉・鶏卵
は主に3月〜4月に市場流通したが、5月下旬時点でまだ流通していると判断し、
この販売禁止措置を講じたとしている。


家畜飼料用原料として出荷された油脂が汚染源か

 飼料の汚染源は、99年1月、ベルギーの油脂製造会社が家畜飼料用原料として
出荷した油脂であるとみられている。同国政府によれば、この油脂は1月下旬、
家畜飼料製造業者(ベルギー10社、フランス1社およびオランダ1社)により飼料
(構成は穀類、ビタミン・ミネラル、油脂および動物たんぱく)の原料の一部と
して加工され、家きん農家に販売された。
 
この問題が発表された直後、当事国ベルギーおよび近隣諸国では次のような対
策を講じた。フランス、ドイツ等では、ベルギー産の鶏肉製品を食べないよう指
導した。ロシア、ポーランドでは輸入禁止措置を講じた。また、ベルギーおよび
オランダでは、問題の飼料が供給されたとみられる養豚農家で出荷を規制した。


EU委、汚染飼料を使用した農家で生産されたすべての畜産物などの廃棄処分等を決定

 一方、EU委員会は6月2日、SVC(常設獣医委員会)で対応策を決定した。これ
によると、@99年1月15日〜6月1日に汚染飼料を使用した家きん農家で生産され
たすべての鶏肉・鶏卵(2%以上の鶏卵を成分とする製品を含む)および問題の
飼料を追跡・調査し市場から排除、滅却すること、Aベルギー政府は、EU加盟国
の調査に当たり十分な情報を提供すること、Bベルギー政府は、鶏肉・鶏卵を輸
出する際に当該家きん農家で生産されたものでない旨の証明を添付することとな
った。

 さらに3日、EU委員会は、汚染した飼料を使用した疑いがあるとして、加盟国
政府が出荷制限を課していた畜産農家に由来する、鶏肉・鶏卵、牛および豚から
生産される畜産物等の流通を禁止することを決定した。


ベルギー政府、豚および牛に由来する畜産物等については、特段の規制を取らず

 しかし、ベルギー政府は、豚および牛に由来する畜産物については、独自の判
断に基づいて、バターおよび脂肪分を多量に含む乳製品を除いては特段の規制を
講じていない。EU委員会は、EUの決定に従うよう求めているが、同国政府は引き
続き、乳製品等の流通を認めるようEU委員会に求めている模様である。また、鶏
肉・鶏卵については、ベルギー政府はすべての製品の流通を停止したが、清浄農
場の特定ができたとしていったん生産販売の再開を認めた。しかし、その直後に
清浄農場リストが撤回され、混乱が生じている。

 ベルギーからの輸出に当たっては、汚染農場由来でない旨を証明した同国政府
発行の証明書が添付されることとなるが、6月10日現在で証明行為は実施されて
いない模様である。EU委員会が6月9日報じたところでは、ベルギーでは家きん農
家811戸、養豚農家746戸および牛飼養農家393戸が出荷制限下にある。一方、ベ
ルギー政府は6月9日、新たに2つの飼料工場が汚染飼料を生産した疑いがあるこ
とが判明したとし、(ベルギー国内で計12工場)、760農場が出荷制限農家に追
加されると発表しており、EU委員会が発表した制限農場数は増加するものとみら
れる。


オランダでは検査の結果汚染は認められず、フランスでは検査結果が間もなく判明

 オランダ政府は、汚染が疑われた飼料や畜産物を検査した結果、汚染は認めら
れなかったと発表し、出荷制限の解除を検討中である。これに対して、EU委員会
は、常設獣医委員会での検討が終わるまで結論を待つよう求めている。同国では、
家きん農家76戸および養豚農家350戸が出荷制限下にある(6月9日EU委員会発表)。

 フランス政府は、汚染が疑われる飼料を使用した農家の追跡と関連畜産物の回
収が進められており、家きんに関しては終了、乳製品については現在実施中、豚
由来の畜産物については今後実施される。並行して進められている畜産物などの
検査結果は間もなく判明するとみられている。同国では、家きん農家81戸、養豚
農家34戸、牛飼養農家62戸および羊飼養農家4戸が出荷制限下にある(6月9日EU
委員会発表)。


油脂に混合されたとみられる再生油が汚染原因として浮上

 また、汚染源とされている油脂の汚染原因は確定していないが、これまで有力
視されていた保管タンク内での汚染の可能性は低くなっており、代わって、当該
油脂に混合されたとみられる油脂が汚染原因として浮上している。この油脂は、
再生油とみられ、ベルギーおよびオランダから搬入されたと報じられている。


BSE問題以来、再度失った消費者の信頼回復が今後大きな課題

 今回のベルギーの畜産物ダイオキシン汚染問題は、96年に世界中を震撼させた
イギリスの牛海綿状脳症(BSE)問題以来の深刻な食品汚染問題となっており、
関係者はその事態の解明を急ぐとともに、以上のようにさまざまな安全対策を講
じている。

 ダイオキシン汚染問題にせよ、BSE問題にせよ、飼料を介した汚染の恐ろしさ
を物語っている。今後、早期に終息することが望まれるが、その後も、再度失っ
た消費者の信頼の回復が大きな課題として残ることとなる。
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