NZ、巨大乳業メーカーの設立を提案


諮問委員会が酪農組合の統合を提案

 ニュージーランド・デイリー・ボード(NZDB)の組織改革をめぐり、NZの酪
農乳業界で激論が交わされている中、酪農乳業の将来のあり方について検討して
いた諮問委員会が、5月初旬、現存する大部分の酪農組合(乳業メーカー)を統
合して、「メガ・コープ」と仮称される単独の巨大な乳業メーカーを設立するこ
とを提案した。

 同委員会は、主要な酪農組合の代表などで構成されており、NZDBが規制緩和
後の酪農乳業界の再編について検討を依頼していた。


実現すれば、市場シェア95%の乳業メーカー

 諮問委員会は、今回の提案を行った理由として、乳業メーカーを1つに統合し
て製造部門の合理化を推進することにより、NZ酪農乳業界が年間約3億NZドル
(約207億円:1NZドル=69円)の収益増加を見込めることを挙げている。

 この提案は、5月初旬から全国で          20回にわたって開催される討論会で説
明されることとなっており、多くの関係者の意見が聴取される予定である。仮に、
提案通り「メガ・コープ」が設立されれば、NZで生産される生乳の95%(年間約1
千万トン)を処理する巨大な乳業メーカーが誕生することとなり、世界で12番目
に規模が大きなものとなる。


乳製品製造部門改革の青写真に

 現在、NZの酪農乳業改革においては、乳製品の輸出販売を一元的に行っている
NZDBの組織改革案(輸出販売部門と酪農サービス提供部門の分離など)が既に
提示されており、今回、乳製品製造部門の再編に関する具体的な青写真が提示さ
れたことにより、おぼろげながら全体の輪郭が示されてきたと言える。


実現に向けクリアすべき問題が山積

 ラクストン食料・繊維相(農林省業務を兼任)は、今回の提案に対し「前進に
向けた大きな一歩」と歓迎する声明を発表する一方、実現に当たっては、公共政
策の面で多くの条件をクリアしなければならないとクギを刺した。これは、商法
上、巨大な組合企業の設立が問題となる可能性があることや、独占を監視してい
る商業委員会の認可を受けなければならないことなどを指している。また、酪農
家が生乳の販売先を自由に選択する権利を失う場合には、新たな問題が生ずるこ
とにもなる。さらに、これまでし烈なシェア争いを繰り広げてきた大手の酪農組
合同志が、過去の経緯をよそにすんなりと統合できるのかという問題も残されて
いる。


脅威を抱く豪州酪農乳業界、一部に落胆も

 一方、今回の提案に対する豪州酪農乳業界の反応は複雑である。これまでひそ
かにNZの酪農組合との合併を画策してきた勢力は、その可能性が事実上絶たれた
ことに落胆している。一般的には、まだ提案の段階とはいえ、豪州最大の乳業メ
ーカーの3〜4倍に相当する巨大なライバルが隣国に出現するという事態に、著し
い脅威を抱いていることは否定できない。

 NZDBのストーリー会長は、単独乳業メーカーの設立がNZ酪農乳業の国際競争
力を大いに高めるとして、関係者の理解を得ることに自信を示しているが、思惑
通り事が運ぶか否か注目されている。

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