豪州、ニューカッスル病再発で190万羽を処分


昨年とは別の地域で発生

 5月12日、ニューサウスウェールズ(NSW)州政府は、中部沿岸のマングロー
ブ・マウンテン地域で確認されたニューカッスル病(ND)に関して、当面の拡
散防止対策を終えたと発表した。

 NDの発生が確認されたのは、シドニーから80kmほど北に向かったブロイラー
生産地帯で、今年4月1日にND発生が報じられて以来、幹線道路での昼夜を徹し
た検問など拡散防止策が講じられていた。今回の発生は、昨年9月にND発生が確
認された場所とは異なる地域であり、NSW州政府は、当時のNDについては昨年
11月までに完全に撲滅したとしている。


NSW州政府、収束宣言したものの対策続行を表明

 ND発生地を中心に、検疫上から制限地域と管理地域に区分したうち、制限地域
内でり患が確認された商業用家きん類(ほとんどがブロイラー、採卵鶏やカモな
ども含む)が処分され、5月12日までには、33農場で計190万羽が処分された。

 その後、NDは確認されていないことから、州政府は「発生確認から43日間、政
府機関のスタッフを中心にボランティアを含め1千人以上の懸命な努力によって、
ND撲滅に向けての最重要課題を遂行した」とする当面の収束宣言を行った。今後
は、制限地域内の家庭内消費用やペット用などの家きん類、また管理地域までも
対象を広げ対策は続けられる。


連邦政府による生産者補償が決定

 しかし、処分が実施された施設では今後も消毒殺菌などの措置が予定され、生
産再開のめどが立っていないことから、経済的な損害はこれからさらに膨らむも
のとみられている。生産者の中には、民間のボランティア団体からの援助を受け
る者も出るなど深刻な影響が出ており、連邦政府は生産者への所得補償など総額
850万豪ドル(7億円:1豪ドル=82円)の支援パッケージを発表した。


担当大臣、鶏肉輸入規制を引き続き固持

 一方、業界関係者の間に、これまでNDの豪州侵入阻止を大きな理由としていた
鶏肉輸入への検疫規制が、今回のND発生を契機に、緩和されるとの憶測が流れた
ことに対し、ヴェイル農漁林業大臣は、直ちにこれを一しゅうする声明を発表し
た。ヴェイル大臣は、「NDを含めた感染症の侵入リスクを否定する科学的な確証
が得られない限り、無条件での鶏肉輸入はあり得ない」とした上で、「今回のND
は低レベルの毒性を持つ菌が突然変異したものが原因であり、野鳥からは確認さ
れておらず、商業用の家きん類のみに発見された豪州特有の病原体である」とし
ている。これは、海外で発生しているNDは依然、豪州に上陸していないとする見
解を示すもので、検疫条件に関しては、すべて科学的な検証に基づくとする豪州
政府の従来からの姿勢を強調するものとなっている。

 現在、豪州への鶏肉輸入は、摂氏70度で143分間の加熱処理が条件とされている
ことから、米国やタイなどの鶏肉輸出国からは実質的に食用鶏肉の輸入を禁じた
措置との強い非難を浴びている。

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