伝染病の流行で鶏肉が高騰(マレーシア)


豚が媒介する伝染病が流行、鶏肉需要強まる

 マレーシアでは、供給の安定と物価高騰の抑制を目的として、鶏肉などの食料
品をはじめとする13品目を価格統制品に指定し、政府が決定する価格以下で販売
することを義務付けている。養鶏部門では生きた鶏と中抜きと体において農家販
売価格、卸売価格、小売価格のそれぞれに統制価格が決定されている。

 同国では、昨年10月から豚を媒体とする日本脳炎およびニパ・ウイルスによる
伝染病が流行し、国内での死亡者が100名を超える事態となった。このため、国
内の豚肉消費が急速に減退したことから鶏肉の需要が強まっており、同国政府に
よると前年比30%を超えて消費が増加しているものとみられている。


政府は小売価格高騰の対策に苦慮

 こうしたことから、鶏肉の小売価格が高騰しており、クアラルンプール市内に
おいても、旧正月明けの3月上旬頃に1kg当たり4リンギ(128円:1リンギ=約32
円)程度であった中抜きと体の小売価格は6.8リンギ(218円)と政府の統制価格
(6リンギ、192円)を上回っている。

 同国の消費者団体などは、国内の需要を賄うため、国内で1日に生産される鶏
約100万羽のうち、約2割を占めるシンガポールなどへの輸出を停止するよう政府
に申し入れた。しかし、両国間の関係を悪化させる恐れがあること、豚肉需要が
回復した際に鶏肉輸出再開が困難になることなどから、政府はこの申し入れを拒
否している。

 同国政府は、立入検査を実施して小売業者などに統制価格を守るよう指導する
とともに、国内需要を満たすため、タイから約200万羽の初生ひなと約900トンの
冷凍鶏肉の輸入などを行っている。しかし、これらのひなが実際に市場で鶏肉と
して出回るまでには、最低でも1ヵ月以上の日数がかかること、イスラム教の教
えに従った処理を行った鶏肉でなければ同教徒が購入しないことなどの理由で輸
入鶏肉の価格が国産よりも高価になることから、実際に価格を引き下げる効果を
発揮できないでいる。


増産に追われる養鶏農家

 養鶏農家では、鶏を通常50日齢(生体重2.5kg)で出荷していたが、2週間飼育
期間を短縮し、36日齢(生体重1.6kg)で出荷するなど増産への対応に追われて
いる。鶏肉への強い需要は、豚肉に対する消費者の信頼が回復するまでは続くも
のと予想されており、事態の収拾にはまだ時間がかかるものとみられている。

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