タイ鶏肉業界、EUの動物愛護への対応を開始


EUでの採卵鶏の飼養に関する基準強化の動きなどを注視

 EUでは、間もなく、動物愛護を目的とした採卵鶏に関する基準強化の規則(以
下「規則」という。)が制定されようとしている。規則では、家畜などを飼養す
るに当たっては、ケージなどに詰めすぎたり、危険な状況下およびストレスが発
生する環境下に置いてはならないとしている。

 タイの鶏肉輸出業者は、今回の基準強化が養鶏全般に及ぶことが想定されると
して、冷凍鶏肉の輸入に適用されるとしている規則の制定などを含めた正確な情
報の把握に努めている。この規則に基づき鶏肉などを生産する場合、生産コスト
の上昇を招き経営がますます苦しいものになるとして、一部の業者ではEUによる
貿易障壁であると非難している。

 しかし、タイからEUへの冷凍鶏肉および鶏肉調製品の輸出量は、96年は2万6千
トン、97年は4万7千トン、98年は7万7千トンと年々拡大し日本に次ぐ重要な市場
であるため、規則通りに鶏の飼養などを行わざるを得ない状況になるとみられて
いる。


多くの改善が必要、業界全体の対応が急務

 今回の規則強化では、自然のままに飼育を行うことに焦点が置かれている。採
卵鶏に関しては、照度の低下が鶏のホルモンバランスに影響し、また、飼料の多
給で過肥に陥るとともに産卵率が低下するとし、改善しなければ最終的には生産
コストの増加につながるとしている。また、飼養スペースについては、1m2当た
りの生体鶏重量の合計が25kgを限度としている。

 このため、タイでは、かなり多くの点を改善しなければならないとしているが、
飼養スペースについては、生産農家にとって生産規模の縮小もしくは追加の設備
投資を要し、経営悪化の大きな要因になるとみている。

 タイ輸出用養鶏生産者協会会長は、タイの大手鶏肉輸出業者であるチャロン・
ポカパン(CP)などのように、最近減少しているEUマーケットへの輸出のさらな
る減少を回避するため、養鶏施設、飼養方法、運搬ケージなどを改善するととも
に、従業員にもこれを徹底させるための研修などを行い、新しい飼養システムの
採用に取り組んでいるところもあるが、業界全体で対応が可能となるよう早急に
準備を進めるとしている。

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