米食肉業界、畜産物価格強制報告法案にほぼ合意(米国)


パッカーの寡占化により、売り手として不利な条件に置かれる生産者

 4月末に開催された下院農業委員会でのヒアリングにおいて、主要家畜生産者
団体と主要パッカー間の強制的価格報告法案に関する交渉がほぼ合意に達したこ
とが明らかにされた。同法案は、パッカーに対して、と畜向けに購入した家畜の
取引価格やその条件などについて、詳細にUSDAに報告することを義務付けよう
とするものである。

 従来、と畜向け肉用牛の価格形成は、生産者とパッカーによる相対取引が主体
であった。しかし、近年では、米農務省(USDA)の公表する取引価格などを指
標価格とし、これに品質などの要素を加味して価格を決める販売契約が増加しつ
つある。肉用牛生産者団体などは、寡占化により影響力の増した大手パッカーに
支配される肉用牛の販売契約が、取引価格全体を引き下げていると問題視してい
た。

 具体的な争点は、USDAに対する取引価格の報告を禁止するという規定が販売
契約の中に挿入されるケースがあることである。USDAには、高価格で取り引き
された肉用牛の情報が報告されないため、結果的に、USDAが取りまとめて報告
する価格が市場実勢よりも低くなり、この価格を基礎に取引を行う肉用牛生産者
が、買い手に対して極めて不利な条件の下に置かれるというものである。


州段階で進む報告義務付けの立法化が合意成立の背景の1つ

 こうしたことから、全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)は、昨年来、肉用牛
取引価格情報などについて、強制的に報告を義務付けるよう求めていた。当初、
このような肉用牛生産者団体の動きに対して傍観的な立場をとっていた全国豚肉
生産者協議会(NPPC)も、昨年末の歴史的な豚価の低迷を受けて、NCBAの動き
に同調することとなった。今回の動きには羊の生産者団体も参加している。

 これまで強制的な価格報告に反対していた主要パッカーが柔軟な姿勢を見せ始
めた背景には、州段階で、次々と同様な法案が可決されつつあったことがある。 
大手パッカーとしては、各州でバラバラな報告を義務付けられるよりは、全国統
一的な報告を選択したものとみられる。


肉用牛取引価格などのUSDAへの報告義務付けに大筋で合意

 肉用牛についての具体的な合意内容は、以下の通りである(肉豚もほぼ同様)。

・連邦食肉検査法が適用されるパッカーは、スポットまたは現金取引について、
 単価、取引頭数およびその取引結果などの概要を1日2回以上USDAに対して報
 告すること

・先物取引や契約により公式に基づき購入価格が決定される肉用牛およびパッカ
 ー所有の肉用牛については、別途取引数量に関して週ごとに報告すること

・USDAは、全国の小売取引データの販売数量および価格に基づき、小売価格の
 情報提供方法を開発すること

・連邦政府の同法案に基づく規定は3年間有効とし、州の法律を置換すること

 このような合意内容について、農業団体の指導者は、これが生産者に対してよ
り高い取引価格をもたらすことを保証するものではないものの、生産者により強
い交渉ポジションをもたらすものになるだろうとしている。

 本件に関しては、5月末に上院農業・栄養・林業委員会でのヒアリングが行わ
れ、法律制定に向けた審議などが進められている。

元のページに戻る