USDA、調理済み食肉製品に対するリステリア菌対策を発表


リステリア菌による食中毒事件で21人が死亡

 リステリア菌(Listeria monocytogenes)は、土や水などの中に広く存在してお
り、未調理の食肉や野菜など生の食品を汚染するばかりでなく、ソフト系チーズ、
ホット・ドッグ、ランチョン・ミートなどの加工食品も汚染することがある。

 ただし、家畜がリステリア菌を腸管内に保有していても病気にはならず、ほと
んどの人はリステリア菌を摂取してもリステリア症にかかることはないとされて
いる。しかし、新生児や老人のほか、ガン治療、エイズ、糖尿病、腎臓病などに
より免疫系が弱っている場合には、致死的な病気になる可能性がある。また、妊
婦に対する症状は軽くとも、胎児の流産や死産を引き起こすことが知られている。

 中央疾病管理予防センター(CDC)によれば、米国内でリステリア症により重
い症状を示す患者数は年間1,100人程度であり、このうち約25%が死亡するとし
ている。

 こうした中、98年の秋から99年の初めにかけて、サラ・リー社(イリノイ州シ
カゴ)のホットドッグおよびデリカテッセン食肉が原因とされるリステリア症に
より、6人の新生児の死亡および流産を含め、合計21人が死亡し、101人が食中毒
にかかるという事件が発生した。


USDA、リステリア菌に対処するためのアクション・プランを発表

 米農務省(USDA)は5月25日、このようなリステリア菌による大量食中毒事件
の発生および同病原菌に係る多くの製品回収措置の発動を踏まえ、リステリア菌
に対処するためのアクション・プランを発表した。

 アクションプランは、この問題の担当部局である食品安全検査局(FSIS)が実
施する3つの短期対策および4つの長期対策からなっており、その概要は以下の通
りである。

−短期対策−

@食肉および家きん肉加工品(調理済み食品)製造業者に対して、危害分析重要
 管理点監視方式(HACCP)がリステリア菌に適切に対処しているかどうか確か
 めるため、その再評価を求める。

A他の食肉および家きん肉処理業者がリステリア菌による食肉等加工品の汚染防
 止のために行ってきた取り組みについて、その幅広い活用が可能となるよう業
 界に対して情報を提供する。

Bリステリア症にり患する可能性の高い人々を対象とした教育啓もうを行う。

−長期対策−

@食肉等加工品製造後のリステリア菌増殖に関する研究計画案を策定するととも
 に、農業試験研究所(ARS)に対して研究を要請する。

A食肉等加工品製造工場がリステリア菌に対処するために適切にHACCPを再評価
 したかどうかを検証するため、綿密な検証計画案を開発する。

B食品医薬品局(FDA)とともに、リステリアの危害評価を実施する。

Cすべての病原菌を管理するため、食肉等加工品に関する食品安全達成基準を策
 定する。

元のページに戻る