増加するバイソンの食肉利用(米国)


食肉への活用でバイソンの飼養頭数が増加

 アメリカン・バイソン(通俗的にはバッファローとも言う。)は、19世紀初頭
までは平均的に見ると約6千万頭が生息していたとされているが、開拓者による
乱獲により、19世紀後半にはわずか5百頭程度までに激減した。しかし、絶滅の
危機に瀕していたバイソンも、現在では北米大陸に20万頭以上が生息しているも
のとみられている。バイソンの生息頭数がここまで回復したのは、保護活動もそ
の理由の1つに挙げられるが、特に、商業目的による食肉の活用を図るバイソン
の肥育牧場の存在が大きい。

 夏には、バイソンなどの野性動物を見ようと、イエローストーン国立公園(ワ
イオミング州)などに大勢の観光客が押し寄せているが、このような公共的な保
護地域におけるバイソンの頭数は、全体の1割に当たる2万頭にも満たない。


脂肪分の少ないバイソン肉、消費拡大を期待

 バイソン生産者は現在、飼養頭数の拡大を図るべく、すべての子雌を保留して
おり、と畜に回されるのは、すべて成雄のみであると言われており、近年、その
飼養頭数は大幅に増加している。

 この背景には、バイソン肉が、牛肉、鶏肉と比較して脂肪、コレステロールが
少なく、消費者の健康志向に合った食肉であるとの期待が広がっていることが挙
げられる。ステーキやロースト用のバイソン肉はゲーム・ミート(狩猟肉)を取
り扱うレストランやステーキハウスのメニューでよく見受けられる。

 一方、バイソン肉生産量の約3分の1を占めるとみられるひき肉は、その価格が
牛ひき肉に比べ倍以上と高い上に、赤身率が高いことから、調理するとパサパサ
になってしまうため、人気は今一つであり、売れ残りが多いのが現状となってい
る。


USDA、バイソンひき肉を買い上げ

 このような状況を受けて、米農務省(USDA)は3月末、価格支持のため総額6
百万ドル(約7億円:1ドル=123円で換算)に及ぶバイソンひき肉の買い上げを
発表し、順次入札が開始されている。買い上げられたバイソンひき肉は、インデ
ィアン特別保留地および信託地区における食料供給プログラムなどの国内の食料
援助プログラムに用いられることとなっている。バイソン肉に関する正確な統計
資料はないが、今回の買い上げ数量は、年間ひき肉生産量の約4分の1に当たるも
のと見込まれている。

 USDAは、昨年も生産過剰となったバイソンひき肉250万ドル(約3億円)相当
の買い上げを行っており、今回の措置は、これに続く大規模なものとなっている。


今後の課題は、生産調整とバイソン肉の需要促進

 USDAは、今回の買い上げ措置に関連して、需要に見合った生産調整を業界と
して行う必要性があることを明確に示すものであり、来年度以降の買い上げを約
束するものではないとしている。

 小規模生産者を中心として増加しつつあるバイソン肥育であるが、その成功の
カギは生産拡大よりも今後の需要促進にかかっていると言える。

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