EUの牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○EUの牛肉消費・価格の動向


牛肉消費は回復傾向も、完全回復には2年間が必要

 EU委員会が先般公表した牛肉市場動向に関する資料によると、6月時点におけ
るEUの牛肉消費は、牛海綿状脳症(BSE)問題が再燃する以前の消費水準と比較
して、加盟15ヵ国平均で3月の23%減から8.8%減の水準まで回復していること
が明らかとなった。EU委員会では、すでにデンマークやオランダなど加盟7ヵ国
については、以前の消費水準に回復したとしており、域内の牛肉消費は順調な回
復傾向にあるとみている。しかし一方では、主要な牛肉消費国であるドイツやフ
ランスなどの消費水準が、引き続き10%以上の減となっていることから、域内の
消費水準が完全に回復するのは、最低でも2年の期間が必要と予測している。

EUの牛肉消費(BSE問題再燃以前との比較)

 資料:EU委員会


肉牛価格は依然として低迷

 牛肉消費の順調な回復とは裏腹に、域内の肉牛価格は依然として低迷を続けて
いる。これは、全体的な牛肉消費の低迷と併せ、BSE問題の再燃・拡大による輸
出需要の不振により、域内の牛肉需給が緩和しているためとみられる。EU委員会
の発表によれば、6月15日現在のEUの肉牛価格は、前年同期と比べ若齢牛で若干
の回復がみられるものの、乳牛などは低迷を続けている。主要牛肉生産国の1つ
であるドイツでは、EU最大の牛肉輸出先であるロシア向けに力を入れるなど、各
国とも需給バランスの改善に努めているが、今のところ大きな効果は現れていな
い。EU委員会では、2001年後期の牛肉過剰在庫は30〜50万トンに達するとみて
おり、数年後に牛肉の介入在庫を放出するためには、早急な牛肉生産の減少が必
要としている。

EUの肉牛価格の推移
(EU15カ国平均の対前年同期比)

 資料:EU委員会


EU委員会は牛肉需給・価格対策の実施へ

 牛肉の需給・価格を安定させるため、EU委員会は、EU農相理事会の承認を受け
て新たな対策の実施を決定した。EU委員会では、域内における粗放的飼育方法の
推進などの対策により、将来的にEUの牛肉需給バランスの回復が図られるものと
期待している。今回実施される対策の主な内容は、@粗放的生産の奨励、A雄牛
および去勢牛を対象とした特別奨励金の交付上限頭数の設定、B特別奨励金の国
別交付上限頭数の削減、C繁殖雌牛奨励金に未経産牛飼育を義務化、D繁殖雌牛
奨励金国家保留分の再交付停止、E通常介入買上の限度数量の引き上げ、などで
あり、各種奨励金などの対象基準を厳格化することで雌牛頭数を削減し、結果的
に子牛生産および牛肉生産を低下させることを目的としている。

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