EU、新たなBSE対策を実施
EU委員会と加盟国との間に対策への温度差も
EUの牛海綿状脳症(BSE)対策として、新たに追加・修正された理事会規則
(No.999/2001)が7月1日に施行された。当初予定では、30ヵ月齢を超える
食用および感染リスクの高い牛(緊急と畜された牛、と畜時に疾病が発見された
牛および農場で死亡した牛など)に対するBSE検査の義務付けなどを主な内容と
していたが、より拡充したBSE対策の実施を目指すEU委員会により、新たな対策
が追加された。しかし、この追加対策については、EU常設獣医委員会(SVC)に
おける審議の中で、特に、肉骨粉(MBM)の飼料利用の禁止措置の延長問題に対
し、フランスなどの一部加盟国から、暫定禁止措置の延長ではなく恒久的な禁止
措置とすべきとの意見が出されるなど、EU委員会との間でのMBM禁止措置に対す
る温度差が顕在化した。
最終的には議決なしの決着に
SVCの審議では、リスクのある牛のBSE検査に対し、対象月齢を30ヵ月から24
ヵ月に変更する提案については賛成が得られたものの、MBMの禁止措置を含むそ
のほかの提案については合意に至らなかった。このため、EU農相理事会でこの提
案について再度検討となったが、ここでも採択は得られなかった。しかし、否決
にも至らなかったため、この提案は承認されたとみなされ、BSE対策に新たな追
加・修正が行われることになった。これは、EU委員会の提案に対し、SVCでは特
定多数決で賛成とも反対ともならず、再審議のため農相理事会に送付されること
になった場合、この農相理事会で一定期間内に採決が行われなければ、提案が承
認されたと見なされるからである。今回のケースがこれに該当するため、結果的
にEU委員会の提案に異議を唱える一部加盟国の立場が顕在化しない形での決着と
なった。
BSE検査とMBMの暫定禁止措置が主点
今回追加された新たなBSE対策の概要は以下の通りである。
1.BSE検査
@ リスクの高い牛について、BSE検査を義務付ける対象月齢を30ヵ月齢超から
24ヵ月齢超に引き下げる。
A 食用に供する30ヵ月齢を超える健康な牛の検査について、BSEの発生がいま
だ確認されていないオーストリア、フィンランド、スウェーデンでは、7月1
日以降は全量検査ではなく、サンプリング検査を年間1万頭以上実施する。
B イギリスでは、BSEの発生・撲滅状況に関する情報収集として、30ヵ月齢を
超える牛を対象としたBSEに関するサンプリング検査を年間5万頭以上実施す
る。ただし、30ヵ月齢を超える牛の全量廃棄は継続する。
C 18ヵ月齢を超える健康な羊およびヤギについて、スクレーピーおよびBSEに
関するサンプリング検査を2002年1月1日から実施する。
D 30ヵ月齢以下の健康な牛を対象としたBSE検査の実施は、加盟国の自主的な
措置として認める。
2.MBMの飼料利用の暫定的な禁止措置を7月1日以降も延長する。
3.7月1日以降、BSEの感染が確認された農場においては、当該感染牛の子畜
および同一牛群のと畜処分を義務付けるが、全飼養牛のと畜処分は加盟国の自
主的措置とする(これまでは、BSE感染牛が発見された農場については、全飼
養牛のと畜処分が義務付けられている)。
4.域外(リスクが低いと考えられる国を除く)からの生体牛の輸入に関して、
次の2つの項目を2001年10月1日から輸入条件として課す。
@ 当該国で肉骨紛の反すう動物への効果的な給与禁止措置がとられていること。
A 当該牛について、牛群および母牛の由来が特定できること。
5.条件付き輸入品目として、域外からの獣脂、ゼラチン、ペットフードなどを
追加する。
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